じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

『地歌箏曲研究』

正月4日の金曜日。

今日からお仕事の方々には申し訳ありませんが、当財団の仕事始めは来週、7日の月曜日。と申しましても、昨年から終わらない仕事を片付けに今日も財団に。

さて本日と明日の2日間、昨年刊行された邦楽関係書籍の中から大変なご労作と言うべきほかない3冊の書籍を刊行順にご紹介をしたいと思います。

先ず本日は、平成24年2月29日発行の『地歌箏曲研究』(京都市立芸術大学音楽研究センター刊)です。

久保田敏子(くぼた さとこ)先生が代表編纂者をお務めのこの書籍は、いずれも約400ページの楽曲編<上・下>と資料編全3分冊から成っています。

楽曲編にはなんと約1100曲の地歌箏曲が取り上げられ、作品ごとに「曲名」「曲種」「作詞者」「作曲者」「初出」「調弦」と「詞章」が解説されています。

また解説編は「総論編」と「資料編」の2項に分かれています。
「総論編」では箏曲以前の日本のコトの紹介、当時日本の音楽界を担っていた当道座と箏曲の誕生の関係性、また伝承と流派が解説されています。同じく「総論編」での三味線については、楽器としての三味線伝来の謎、三味線音楽の系譜に続き、地歌の誕生が解説されています。また、地歌箏曲における「組歌」「段物」「作物」や「獅子物」など、さらに「三つ物」「四つ物」などの分類をはじめ、実に詳細な研究が紹介されています。

「資料編」には、地歌箏曲の「関連人物伝」として500余名の演奏家、研究家が紹介され、さらに文献の解題と図表資料までが付されています。

私にとりまして、これまで地歌箏曲の文献資料として最も役に立っていたのは、昭和62年に発売された『箏曲地歌大系』の解説書でした。(写真は当時のLPレコードではなく、現在のCD全集です)

また本全集の詳細につきましては次のURLをご覧ください。
http://search.japo-net.or.jp/item.php?id=VZCG-8150


平野健次先生監修解説によるこのレコード全集は、60枚組のLPレコードとA4判320ページの解説書、豪華?木製キャビネット段ボール箱に入れられ、その重量は18kgでした。
半世紀を超える現在もCD化されて発売を続けているこの全集の解説書が、実は大変に便利な地歌箏曲の手引きなのです。

後年、シャープの「書院」ワープロを愛用され、左手に煙草、右手の指1本でパチパチとキーボードを打っておられた平野先生でしたが、この『箏曲地歌大系』時代はまだまだ原稿用紙と鉛筆の時代でした。

なお余談ですが、創立60周年で重さが18kg、レコード60枚組で18万円と何か意味関連意図があるようなことになりましたが、これはレコードの枚数も含めて全く偶然の結果でした。

以上のように、本日ご紹介しました『地歌筝曲研究』が『箏曲地歌大系』解説書と共に、本当に座右の書として手放せなくなったことは言うまでもありません。

そして特筆すべきは、この3分冊全1200ページに及ぶ『地歌筝曲研究』の定価ですが、なななんと!3000円です。

地歌箏曲に関わる全ての皆様に、この1冊を強くお勧めする次第です。

(理事長 藤本)