じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

旧正月に思うこと 『続近世邦楽考』

今日の東京は霙まじりの雨が夕方まで降り続く寒い一日。
もっとも今朝早くまで「都内は積雪10cm」の大雪予報で、準備万端・万全の用意をされた方も多かったのではないでしょうか。
と言うのも、今日と反対だったのが先月14日。「本日は雨」の予報が大きく外れ、10数年ぶりの積雪8cmで都内は大混乱、本当に大変でした。

何かと多用で慌ただしい1月があっと言う間に過ぎ去り、間もなく旧正月(旧暦の正月元旦)となります。
今年は2月10日が元旦となるこの「旧暦」が、実はなかなかに難しいものなのです。
いくつかの決まりごとの中で分かりやすいのが、旧暦の各月の始まる「1日」が「朔日」、つまり「お月様が出ない(見えない)日」であることです。その日から「お月様」が次第に満ちて来るということから、各月の始まりは「月立ち(つきたち)」が転じて「ついたち」となったのだそうで、よって「朔日(さくび)」を「ついたち」とも読みます。
また「新月」とは、本来は朔の後に初めて見えるお月様のことを差し、「満月」に対して「新月」を「見えないお月様」とするのは誤りで、旧暦三日ごろの三日月を「新月」と呼ぶこと。その他暦の計算法など多くの約束事があります。

江戸時代の正月も今と変わらない賑わいを見せていたそうです。
元日には、江戸城への徳川一門と譜代大名の登城もありました。2日は外様大名、3日は諸大名の嫡子と江戸町民の登城でした。
2日は初売り書初め、弾き初めとあります。吉原の年始も2日、美しく着飾って引手茶屋を巡りました。

さて、江戸の芝居小屋はご存じの通り、中村座市村座守田座の三軒だけでした。この芝居小屋では、元日に座の役者が舞台に集まって年頭のご祝儀を口上する「翁わたし」を演じ、子供役者三番叟を踊り、また座の頭取が春狂言名題を読み上げました。春芝居の開場は、正月15日からと決まっていたのです。
芝居に行くことを無上の楽しみとしていた武家から町民まで、このように新たに始まる年を寿ぐ春芝居の開催を待ちに待っていたことと思います。

『続近世邦楽考』(竹内道敬著)は、写真でご覧頂けますようなふんだんな図版と詳細な考証によって、江戸時代に花開いた芝居文化を紐解く貴重な資料となっています。

著者の竹内先生にお話を伺うと、敗戦後に始められた古書の収集の眼目のひとつが「正本(しょうほん)」で、今や芝居や地歌、清元などの第一級の資料となったものを、数多くその当時集められています。
昨年11月15日発行の『続近世邦楽考』(南窓社刊)をご紹介致しました。



(理事長 藤本)