じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

現邦連の作品演奏会

第26回「現代邦楽作曲家連盟作品演奏会」に行ってきました(2013年2月18日18:30開演、四谷区民ホール)。

現代邦楽作曲家連盟は略称「現邦連」、日本音楽の発展を願って、創作活動に携わっている有志によって結成された団体です。一昨年、やはり2月18日に第24回の作品演奏会に伺ってブログ記事を書いたのですが、そこに杵屋正邦さんの「現代邦楽作曲家連盟とは」という文章を引いていますので、詳しくはこちらをごらんください。(⇒満月の夜に - じゃぽブログ
今年のプログラムは次の通り。

1.清元栄吉 作品 「etude ii」(新作初演)
 三味線:清元栄吉、松永忠一郎

2.田原順子 作品 「常識」(新作初演)
 琵琶:田原順子

3.今藤長龍郎 作品 「静・知盛」(新作初演)
 三味線:今藤長龍郎、今藤政十郎
 笛:藤舎推峰

4.中島靖子 作品 「汚れちまった悲しみに……」(新作初演)
 (中原中也 詞)
 十七弦:宮越雅虹

5.山本邦山 作品 尺八四重奏曲「衆籟」
 尺八:田辺冽山、山本真山、田辺頌山、難波竹山

昨年の財団賞受賞者、清元栄吉さんと第9回受賞者の今藤長龍郎さんも、意欲的な新作を自らの三味線で発表していました。
そして何より印象的だったのが、今年の1月4日に87歳の誕生日を迎えられた中島靖子先生の新作です。中原中也の有名な詩「汚れちまった悲しみに」を十七弦の弾き唄いという珍しいスタイルで発表されました。

十七弦は弾くだけでもたいへんなエネルギーがいると思うのですが、宮越さんがすばらしい声と演奏で、中也の詩の深く静かな世界を表現していました。
終演後、中島先生をお見かけしたのでご挨拶をして、ぶしつけながら「どうしてこの詩を選ばれたのですか?」と伺ったところ、「大好きな詩だから」とのお答えでした。「でもね、大好きな詩に曲をつけるのは、こわいことでもあるの・・・」とおっしゃっていました。あの心に沁みいるような曲の感じは、この詩をとても大切に思って作られたことの表れなのかもしれません。そして、いくつになっても「こわいこと」に挑戦されるお姿に敬服いたしました。
一昨年は満月の夜でしたが、今年は外に出ると小雨がぱらついていました。意外に冷たくない、春を予感させる雨でした。来年もこの日、2014年2月18日(火)に第27回の演奏会が予定されています。

(Y)