じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

添田唖蝉坊・知道展 明治・大正のストリート・シンガー

「演歌」とは歌による演説のこと。今、普通にジャンルとして言う演歌とは違います。その「演歌」を作り出し、育て上げた、添田唖蝉坊(そえだ・あぜんぼう)と添田知道(そえだ・ともみち)親子を取り上げた展覧会が神奈川近代文学館で開催されます。


添田唖蝉坊・知道展  明治・大正のストリート・シンガー」
会期=2013年(平成25年)3月2日(土)から4月14日(日)
開館時間=午前9時30分〜午後5時(入館は4時30分まで)月曜休館
会場=神奈川近代文学館第2展示室
観覧料=一般400円(300円)、65歳以上/20歳未満及び学生200円(150円)、高校生100円、中学生以下無料 <( )内は20名以上の団体料金>
 ※東日本大震災の罹災証明書、被災証明書等の提示で無料
主催=県立神奈川近代文学館、公益財団法人神奈川文学振興会
後援=NHK横浜放送局FMヨコハマ神奈川新聞社tvkテレビ神奈川
協賛=東京急行電鉄神奈川近代文学館を支援(サポート)する会
http://www.kanabun.or.jp/te0534.html

添田唖蝉坊(1872〜1944)とその息子・知道(1902〜1980)は、明治半ばから大正期にかけて巷に流行った演歌の作者・演者として圧倒的な人気を誇った父子です。

明治初期に盛んであった自由民権運動の演説などがそのルーツとされる当時の演歌は、今日の演歌とはかけ離れたメッセージ・ソングであり、歌詞には政治や社会への痛烈な批判や諷刺がこめられていました。これを作り、街頭で歌う演歌師は気鋭のストリート・シンガーであり、市井のジャーナリストでもありました。その頂点に立ったのが唖蝉坊です。「ストライキ節」「ラッパ節」「あゝ金の世」「ノンキ節」など、唖蝉坊の演歌は、無骨で啓蒙色の強い従来の演歌(壮士節)とは異なり、民衆の立場から世相を捉えた親しみやすさで、広く人びとの心をとらえました。

父・唖蝉坊の薦めで書いたデビュー作「東京節」が大流行した長男・知道も10代から演歌師として活躍し、「復興節」「ストトン節」などのヒット作を著した後、文筆業に転じます。早くに母を亡くした幼少年期の知道は、演歌に熱中し、家族を顧みない唖蝉坊に反発を覚えはしたものの、父と同じ道を歩んだことで、父の卓抜した才能を認め、後年唖蝉坊の顕彰に努めます。また演歌だけでなく、下層社会のさまざまな文化を考察した著作を数多く遺しました。

本展は知道の甥・入方宏氏からご寄贈いただいたコレクション「添田唖蝉坊・知道文庫」から、稀少な演歌本などの関連資料で構成します。本展を通じて、終始反骨精神を貫いた父子の生涯と、現代社会へも通じる鋭い批評性、諧謔味に満ちた作品世界の真価をお伝えしたいと願っています。

(以上、神奈川近代文学館のサイトより)

また、今回の展覧会では以下の関連行事が予定されています。

<記念イベント>
2013年3月17日(日)
「なぎら健壱トーク&ライブ 〜明治・大正演歌の魅力〜」
出演:なぎら健壱シンガー・ソングライター

2013年4月6日(土)
「土取利行・語りと弾き唄い〜唖蝉坊・知道演歌の底流にあるもの〜」
出演:土取利行(音楽家

<ギャラリートーク
3月10日、24日、4月7日(隔週日曜日) 14:00〜
※3月10日ゲスト:岡大介シンガー・ソングライター
会場=展示館1階エントランスホール


展覧会の会期中、添田唖蝉坊・知道の演歌を土取利行さんが桃山晴衣さんの三味線を手に弾き語りで歌った2枚組CDが、館内で先行発売される予定です。ジャケットから録音まで、すべて土取さんによる自主制作盤。マスタリングはモルグ社の須藤力さん。いずれは立光学舎(りゅうこうがくしゃ)でも通販を行うと伺っています。詳細情報は土取さんのホームページにアップされるので、今後も要チェックです。


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なぜ演歌なのか(2012年06月27日)
歌は自由をめざす!(2011年04月27日)

(堀内)