じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

落語の世界は深い!part4

本日の話題は「落語」。現在の東京にある定席寄席は、新宿末廣亭上野鈴本演芸場池袋演芸場、そして浅草演芸ホールの四席。中でも浅草といえば、大衆文化の発信地であり、浅草を代表する33名の芸能人の方々の写真パネルが、浅草六区通りの両脇の街燈に飾られ、道行く人の目を楽しませています。


そして六区通りに面しているのが、浅草唯一の落語定席「浅草演芸ホール」。多くのお客さんでにぎわいを見せ、今日の浅草芸能文化を牽引しているといっても過言ではありません。漫才、漫談、コント、マジックなどなど、実力派芸人さんを間近で楽しめる寄席で、私も先日、様々な演目を思いっきり楽しんでまいりました。

弊財団でも、数多くの落語CDを発売しておりますが、本日は江戸落語を代表する二人の名人を紹介致します!
まずは、「五代目古今亭志ん生」師匠。荒唐無稽で破天荒、独特な芸風で人間の本質を描く。永遠に生き続ける芸と称される志ん生師匠。「火焔太鼓」「鈴振り」「芝浜」「抜け雀」「らくだ」など代表作は数多いですが、噺に出てくる登場人物の名前はかなりいい加減で、最初の「熊さん」から最後には「八っつあん」に代わるなどといったことは日常茶飯事であったそう。噺の途中で登場人物の名前を忘れてしまったが「・・・どうでもいい名前」と何食わぬ顔で済ませて客を爆笑させたり、次男の3代目志ん朝師匠が噺の登場人物名を問うと「何だっていい! 」と答えたりするなど、登場人物の名前を忘れて高座を去った8代目桂文楽師匠とは対照的であった、とのことです。
しかし、志ん生師匠はレパートリーの多い噺家さんで、演じたことが確認できる噺だけでも250を超えています。その数多い演目の中でも、十八番中の十八番と言われているのが、「火焔太鼓」です。
頼りない古道具屋の主人・甚兵衛が古くて汚い「太鼓」を仕入れてくるが、おかみさんは渋い顔。ところが、この太鼓が大名の目に止まり、それがとんでもない事態へと。。。志ん生師匠全盛期の一席です。
◆「火焔太鼓」「品川心中」「鮑のし」
もう一人の名人は、「六代目三遊亭圓生」師匠。幅広いレパートリーときめの細かい芸。三遊派本来の本格的な芸の継承者と言われる圓生師匠。「妾馬」「花筏」「やかん」「三人旅」「火事息子」などこちらも代表作数多し。
八代目桂文楽、五代目古今亭志ん生と並んで、昭和の三名人と言われた圓生師匠。人気が看板に追いついたのは、五十歳を過ぎた1950年代ですから、ずいぶん遅咲きでありました。その売り出しのきっかけをつかんだのが、「妾馬」。八五郎の妹が大名の側室となり、男の子を出産。そこで大名に招かれ、お屋敷に伺うことになるわけだが、まわりが心配するほどのがさつ者の八五郎の運命やいかに。。。
◆「妾馬」「掛取万歳」「紀州」
また本日は紹介できませんでしたが、上方にも名人は多数存在します。中でも、形良く端正に練り上げられた艶のある芸。「繊細」そして「華麗」な芸風を併せ持つ「三代目桂春団治」。そして、酒をこよなく愛し、豪放磊落な語り口で上方落語の復興に生涯を賭けた「六代目笑福亭松鶴」。両師匠の作品は、次の機会に、詳しく紹介したいと思います。
最後になりますが、ブログ冒頭で触れた「浅草六区通りの芸能人の街燈パネル」。実は、1名分だけ「予約済」の文字だけ。浅草フランス座出身で、映画「戦場のメリークリスマス」主演、そして今では世界的映画監督、のあの方のために空けてある?

(よっしゃん)