じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

NHKホールで第13回『地域伝統まつり』

先週末の2月23日(土)24日(日)に、NHKホールで第13回『地域伝統まつり』が催されました。

2日間に渡って10都道府県から地域伝統芸能の担い手が集い、能・狂言も加えると計12の演目が披露されました。13年間続けられてきたこのお祭りの今年のテーマは『鎮め(しずめ)』。このテーマに多くの方が東日本大震災を想起されたと思います。公演パンフレットの冒頭の「厄災をもたらす鬼神や荒ぶる魂の鎮まることを・・・」という梅原猛さんの文章の通り、本当に、今回の公演が鎮魂となりますよう、お祈りしています。

では、まずは演目のご紹介から。

私は24日の回を観に行きました。感想を一言で申し上げるのが難しいのですが、まず感じたのはエネルギッシュ、そしてダイナミック。物語性があり、時に優麗で、時に土着的なおもしろみがあり、目を奪う華さもある・・・。正直な感想として、「地域固有の伝統芸能ってこんなに楽しいものなのか」と思いました。

印象的だったのは、福島県南相馬市からいらした村上田植保存会の方達の「村上の田植え踊」。公演そのものも楽しいものでしたが(田植前の代掻きの仕草を、道化役の男性がユーモラスに演じ、ほんとうに笑ってしまいました!)、終わった途端に、観客から大きな掛け声が掛かったのには、一瞬はっとさせられました。今回、会場には観客として地方から来られた方もかなりいらっしゃったようです。同郷の方からの応援の声でした。出演者へのインタビューも行われましたが、方言での受け答えにも会場から歓声が・・・。

田植えに出てくる牛の衣装も、流された泥の中から見つかったとか(福島の方言に不慣れで、正しく聞き取れていなかったらごめんなさい)。このエピソードを聞いて思い出したことがありました。相馬の野馬追です。相馬と言えば、勇壮な野馬追がとても有名です。毎年7月頃に行われる野馬追ですが、東日本大震災では甚大な被害がありましたから2011年の開催は危ぶまれたと聞きます。それでも、検討を重ねた上、亡くなられた方の鎮魂を願い復興のシンボルとして「東日本大震災復興 相馬三社野馬追」と称し実施されたのです。当時それを新聞で知り、その気骨に感じ入り目頭が熱くなったことを思い出します。今回の出演者の方も多くが、震災で家族やご友人を亡くされるといったことを経験されているとのこと、そして衣装は津波で流出したが、地元の染物屋さんに再現してもらったとのこと。そのお話を舞台上で聞きながら、福島の方々の復興への思いに、ふたたび胸が熱くなりました。

◆福島県 南相馬市 相馬野馬追執行委員会公式サイトより

さて、各々の公演ごとに司会である竹下景子さんと水谷彰宏さんによりインタビューが出演者に対しなされたのですが、一つ意外だったことがあります。それは、若い担い手もいるということ。若いというのは、こどもの担い手、つまり歳が若いということもありますが、経験年数の若い担い手もいらっしゃるようです。数十年の経験をお持ちのベテランもいらっしゃいましたが、半年という方も。南沢神楽・五大領(岩手県一関市)の出演者の方曰く、50歳から始めましたとのこと。その理由は、一時期途絶えてしまい、これでは自分の地元に何もなくなってしまうという危機感を抱いたから。実際、郷土芸能は戦後激減し、現在、5分の3は消えてしまったそうです。今回10歳に満たない出演者もいましたし、始めて間もない方もいらっしゃいました、そして50歳を過ぎてから始めた方もいらっしゃると聞いて、元気をもらったのは私だけではないのではないでしょうか。

3月17日(日)午後2時〜5時NHKEテレで放送予定です。是非、みなさまもお楽しみ下さい。

※ 出演県の物産展もありました!

(弘)