じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

『月刊 大和路ならら』


昨日に続いて今年の東大寺二月堂修二会に関連した内容になります。繰り返しになりますが、奈良国立博物館では「お水取り」に合わせて平成25年2月9日(土)〜3月17日(日)の期間に特別陳列「お水取り」の企画展を開催しています→http://www.narahaku.go.jp/exhibition/2013toku/omizutori/2013omizutori_index.html
奈良国立博物館ミュージアムショップ/TOPページ・・・こちらで販売されていた『月刊 大和路ならら』(以下『ならら』)2013年2月号が修二会の特集で「神名帳(じんみょうちょう)の世界」という副題がついていましたので入手しました。二月堂神名帳の特徴などが、東京文化財研究所名誉研究員の佐藤道子さんへの取材を通して掲載されていましたが、この方は昨日もご紹介しましたこのCDの解説寄稿者のお一人でもあります→http://search.japo-net.or.jp/item.php?id=VZCG-731

『ならら』に・・・この1年の罪を、練行衆(れんぎょうしゅう)が万人に代わってひたすら十一面観音に悔い、天下太安や五穀豊穣、万民の幸せを祈る東大寺二月堂修二会・・・とあります。修二会は現在では華やかなお松明(おたいまつ)が特に観光客を集めていますが、これはその一部分にすぎないわけですね。修二会の起源がこちらの「CITY MAGAZINEマイ奈良」のサイトでも紹介されていました→CastBack NARAMACHI-35

もとは、兜率天(とそつてん)の天人が行っていた十一面観音の悔過(けか)法要を人間界でも行わせて下さい、と実忠和尚(じっちゅうかしょう)が菩薩様にお願いして行うようになった。。。兜率天の一日は人間界の400年に相当するので、人間界でこの悔過法要を行う時には駆け足で行うことによって帳尻を合わせることができるかもしれない。。。そのためでしょうか、二月堂の本堂に練行衆が入る時には松明と供に駆け足で階段を駆け上って入堂し、悔過作法の間にも「走り」、退出の際も松明とともに駆け下りて行かれました。「お水取り」の時もまた然り。香水(こうずい)を汲むために二月堂の下にある閼伽井屋(あかいや)の井戸に向かうために駆け足で階段を下りて移動。。

前出のCD『お水取り 東大寺修二会(実況録音)[語り:小沢昭一]』のブックレットに掲載の佐藤道子さんの文章を引用すると、

古代の人人にとって、春の初めに若水を汲んで邪気を払うという習俗は、おそらく非常に厳粛で、切実な祈りの籠ったものだったのだろう。それゆえに“お水取り”の名が行事全体を指すほどに一般化し、現在に至っているのではなかろうか。

とあります。

『ならら』の22〜25ページに載っている現東大寺長老の狭川宗玄(さがわそうげん)師の談、「神名帳モーツァルトの調べ」も興味深いものでした。

神名帳は音楽でいうとソナタ形式ですね。モーツァルト風に軽く楽しく読めます。反対に過去帳はベートーベンです。重々しい。お酒でいえば神名帳はワイン、過去帳は日本酒ですな。

興味のあるかたは『ならら』をご一読ください。私が何となく連想したモーツァルトの音楽は「フルートとハープのための協奏曲 K299」の第2楽章でした→YouTube 天上で流れているかのような清らかな、ある種この世のものとも思えない美しさを持った楽章だと思います。
月刊大和路ならら
今年の修二会では後半行事の頂点となる「お水取り」を拝見したので、来年は是非とも前半の頂点となる「小観音(こがんのん)」(3月7日)に伺いたいものです。

(J)