じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

新・歌舞伎座、行ってきました!

4月2日から始まった「歌舞伎座新開場杮葺落(こけらおとし)四月大歌舞伎」に行ってきました。

2010年4月のさよなら公演「御名残四月大歌舞伎」を観てから3年、建て替えを経て待ちに待った新しい歌舞伎座の開場です。長かったです。
まずは外観を撮影。後ろに高層ビルが建ったこと以外は、前の歌舞伎座とおんなじという印象です。櫓(やぐら)も戻ってきました。

正面玄関を入ると、切符のもぎりから筋書き売り場まで、前と同じ動線。客席に入ると、元の歌舞伎座の舞台がそのままあるような錯覚におそわれました。連なる提灯や天井、壁や柱、座席の色味もまったく一緒です。

もちろん、天井には一つのしみもなく、花道もまっさら。座席も座り心地がよくなっていますが、まったく新しい劇場というより、改装しただけ?と思ってしまうほど元の歌舞伎座に戻ってきたみたいな気分なのです。

休憩時間に探検したロビーのほうはだいぶ変わっていて、まずエスカレーターとエレベーターがついたのが何より大きな変化。1階にはお手洗いがなく、地下にたっぷりスペースをとっていました。喫煙所ができたり(以前は廊下で煙を出していました)、各階ごとにドリンクコーナーがあったり、また入って左側にあった売店コーナーは右側のほうにまとまっていて、オープン記念の品やお土産を買う人でごったがえしていました。
帰りに立ち寄った歌舞伎座の地下2階にあたる「木挽町(こびきちょう)広場」は地下鉄の東銀座駅に直結しています。歌舞伎座の切符売り場はこちらに移っていました。お弁当やお土産売り場、タリーズコーヒーやセブン・イレブンもあって観劇の前後に便利そう。歌舞伎を観なくても、ここに来るだけでも雰囲気を味わうことができます。

長い行列ができていた先は、FAUCHONの「エクレール カブキ」。4月7日までの限定だったようです。
さて、演目のほうですが、第一部を拝見してきました。

まずは「壽祝歌舞伎華彩(ことぶきいわうかぶきのいろどり)鶴寿千歳」で幕開け。坂田藤十郎さんを初め、新進の若手もそろった華やかな舞台。歌舞伎としては珍しく箏曲昭和2年、今井慶松作曲)の舞踊で、山田流箏曲の中能島弘子さんとご社中の演奏でした。
次は清元の舞踊で「お祭り」。「十八世中村勘三郎に捧ぐ」とあり、昨年12月に急逝した勘三郎さんゆかりの方々が出演していました。長男の勘九郎さんが、鳶の若い衆に扮した息子の七緒八(なおや)ちゃん(2歳)の手をひいて花道を登場するシーンはとても微笑ましいものでした。孫との共演がかなわなかった勘三郎さんの無念さを思うことにもなりましたが、七緒八ちゃんは幕切れでお父さんを真似て足を踏み出し、扇子を広げて見得を切って、大きな拍手を受けていました。
勘三郎さんと幼い頃からよき友でありよきライバルであった坂東三津五郎さんは鳶頭を演じましたが、「筋書き」にこんな言葉を寄せています。「複雑な思いがありますが、彼は湿っぽいことが好きではなかった。新しい歌舞伎座で、飛びっきり華やかで明るい舞台にして、これからも歌舞伎は元気にいく、というメッセージを伝えて行くのが、彼に捧げるのにふさわしいことだと思います。粋にやりたいですね」。本当にそのとおりの華やかでにぎやかな舞台でした。
最後は「一谷嫩軍記」から「熊谷陣屋」。熊谷直実中村吉右衛門さんは3年前のさよなら公演でも同じ役でしたが、あのとき、弥陀六の役を元気に演じていた中村富十郎さんが今はいないことが寂しく思いおこされました。

中村富十郎さん、中村雀右衛門さんをはじめ、さよなら公演で観た中村芝翫さん、市川團十郎さん、中村勘三郎さんまでが「思い出の俳優たち」のコーナーに掲げられているのに、3年の月日というものを感じました。
一方で新開場の舞台では若い出演者も熱演していて、世代交代が進んだことを思わずにはいられませんでした。それはそれで喜ぶべきことで、これからも末永く歌舞伎座で私たちを楽しませてくれるものと期待します。やっぱり歌舞伎座で観る歌舞伎はいいなあとしみじみ思った一日でした。

(Y)

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