じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

藤井昭子さん地歌ライブ第64回

4月1日、藤井昭子さん地歌ライブ2013に行って参りました。今回は第64回。64回も続けるというのは並大抵のことではありません。以下、弊財団HP公演情報より、ライブの目的について藤井昭子さんご自身のコメントを掲載します。

現代における伝統音楽の継承と古典の新たな可能性を追求する場として、2001年6月に開始。本年まで足かけ13年間に亘り、2ヶ月毎に定期開催しています。本年の「地歌ライブ」は地歌箏曲の歴史を振り返り、全5回の公演を開催させて頂きます。

今回の地歌ライブは「明治新曲〜江戸から明治へ、時代を映す創作活動」と題され、明治維新後の新時代に生まれた作品から選んだプログラムとのこと。秋・冬(新年)・初夏を歌ったものですので季節としては今とマッチしませんが、どの曲も新時代である明治期に新しく関西で生まれたとあって、明るさ、華やかさ、新しい息吹を感じさせるもの。そういう意味で今の季節にピッタリ、このような考え方の選曲もあるものなのだなと、しみじみ感じ入りました。

会場はほぼ満員。歌と演奏の美しさはもちろんのこと、藤井昭子さんのチャーミングなお人柄、曲間に差し挟まれる演奏者への楽しいインタビュー、趣のある会場の魅力、そんな側面も含めて、ライブを楽しみにいらっしゃるお客さまが大勢いらっしゃるのではないかと思います。以下、今回の曲目と演奏者です。

秋の言の葉
箏 藤井昭子 尺八 田辺頌山
明治松竹梅
箏(本手)藤井昭子 箏(替手)渡辺明
楓の花
箏(本手)藤井昭子 箏(替手)奥田雅楽之一 尺八 田辺頌山

このブログでもいくども地歌ライブについては話題にしております。今回は求道会館について少々書きたいと思います。

求道会館(東京都指定有形文化財)を設計した武田五一(明治5年〜昭和13年)は、建築家としての活動の他、文化財修復その他様々な方面で活躍した方だそうです。ヨーロッパ様式が主だった当時の建築界に近代建築を取り込む一方で、日本建築の良さを大切にした世代のひとりとのこと。求道会館は、彼が最も円熟し自在に腕をふるっていたころの代表作の一つ、と言われています。


■設計:武田五一
■所在地:東京都文京区本郷6-20-5
■用途:ホール
■竣工:1915年(大正4年)11月
 (2002年修復工事完了)
■規模:建築面積307m2 延床508m2
■構造:煉瓦造(一部RC造)木造小屋組石綿板葺き2階建
ARCHITECHTUAL MAPより)

会館の内部はキリスト教会のようですが、祭壇のところに和風の六角堂がまつられており、和洋折衷のような不思議な様式美に惹かれた方もいらっしゃるのではないでしょうか。求道会館は、浄土真宗僧侶の近角常観(ちかずみじょうかん・明治3年4月24日〜昭和16年)の注文に基づいて建築されました。仏教界の刷新をしようと欧州留学もした常観は、その経験を元に一般の人々に信仰を広める場として求道会館を建てたそうです。武田五一も常観と同じ時期に欧州留学をし、ヨーロッパ近代建築を学び日本への定着を試みてきたとのこと。志の重なる二人が共鳴してこのような素晴らしい建築が生まれたのかもしれませんね。

当時は今ほど工業化されておらず、椅子やドアなど細かなところまで建築家がデザインしていたそうです。求道会館もかなりの部分が武田五一自身の設計とみられております。是非、訪れた方には外観のみならず、ディテールにまで美しさを堪能してはいかがでしょうか。

以下、関連ブログをご紹介します。

2013年の地歌ライブ、スタート
第六十回 藤井昭子地歌ライブ
藤井昭子第53回地歌Live at 求道会館
進化を続ける藤井昭子
【5/31(7)】藤井昭子《地歌》 #charity531

(弘)