じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

落語「志ん輔の会」其の三

先日18日(木)国立演芸場で行われた落語「志ん輔の会」に行って参りました。この日は他に、落語で「古今亭半輔」、「桂宮治」。太神楽(だいかぐら)で「翁谷和助・翁谷小花」の各演者が出演。太神楽とは、江戸時代末期から寄席芸能として広く大衆の人気を集めた、日本の総合演芸の事を指すそうです。 内容として、主に獅子舞をはじめとした「舞」と、傘回しをはじめとした「曲」があります。お正月になると必ず演芸番組で目にしていた「おめでとう〜ございま〜す! 」で有名な海老一染之助・染太郎師匠の曲芸がまさに太神楽ということです。

そんな共演者の芸もありつつ、今回のメインの古今亭志ん輔師匠の噺は、圓朝師匠の代表作として知られる「真景累ヶ淵(しんけいかさねがふち)」。全段を収録したCD作品も「八代目林家正蔵」と「桂歌丸」の2作品のみ、という大変貴重な演目です。
お金を増やすことが楽しみな高利貸し・皆川宗悦が、旗本・深見新左衛門に切られたことが序章となり、新左衛門の息子の新五郎・新吉と、宗悦の娘の豊志賀・お園との複雑な因果関係へと繋がってゆく物語。「怪談」でもあり、そして「人情噺」でもある本作。
今回は、全段連続口演の其の三。前回の其の二は、昨年11月に開催され、ブログでも紹介いたしましたが、「豊志賀の死」の段のはなしでありました。そして今回は、「お久殺しとお累との婚礼」の段のはなし。

真景累ヶ淵」其の二のあらすじ 〜「志ん輔の会」パンフより抜粋〜
お園の死から十七年、姉お志賀は富本の師匠豊志賀となっていた。しかし年下の新吉との仲が原因で評判が落ち、今や弟子はお久ただ一人。ある日、豊志賀の顔に出来物が出来る。豊志賀は新吉とお久の仲を邪推。看病に疲れた新吉は偶然お久に出会い、お久と二人で逃げようとする。その途端、お久の顔が豊志賀の顔に変わった。驚いた新吉がお久を置き去りにして勘蔵の家へ逃げ帰ると、豊志賀が来ているという。新吉は豊志賀と話した後駕籠に乗せたところへ、豊志賀が死んだとの知らせが届いた。「そんなはずは、、、」と駕籠を覗くと中は空。帰って見ると豊志賀は死んでいた。書置きには「新吉の妻を七人までとり殺す」とあった。。。

豊志賀の墓参で出会った新吉とお久。その場でお久の実家の下総羽生村へ駆け落ちするも、道中、新吉が豊志賀の亡霊によりお久を殺してしまう。後日お久が埋葬された羽生村の法蔵寺へ墓参すると、そこで出会ったお累が江戸育ちの新吉に恋慕。新吉の運命やいかに。。。という今作。
今回は、ヴァイオリン、胡弓、チェロが効果音として使用され、さらには雷鳴轟く場面では、舞台に稲妻が走る照明もあり、視覚と聴覚に訴える見応えのある演出でありました。前回も感じたことですが、志ん輔師匠の“間”が絶妙。ぐっと息を呑み、ふっと息を吐く、その時々の“間”に聴衆の動きも止まる。そして、時には冷たく、時には生温かく聞こえてくる“ヴァイオリンの音”。闇の中を流れる風の音として、まわりの静けさをより際立たせる。恐怖の情景を演出する効果音として非常に耳に残る“音”でありました。
“落語は笑うもの”という自分の概念をくつがえす「真景累ヶ淵」のはなしは、本当に奥深く、そしておもしろい。
全段を演じることは大変珍しいことであり、ご興味あればぜひ皆様も今後の「志ん輔の会」ご鑑賞くださいませ。

(よっしゃん)