じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

髪結いの亭主/代書屋 【初台寄席】

前のブログで紹介させていただきました初台寄席。2か月に1度の開催、ということで楽しみにしておりまして、先日6月16日にも行ってまいりました。今回は、立川志の春さんそして、鈴々舎八ゑ馬さんが各々1席ずつ。今回で初台寄席、開催5回目。初のご出演です。相変わらずの、前代未聞ではないかと思うほどの「細い」高座。台より座布団の方が大きいのがお分かりになりますでしょうか。観客も手を伸ばせば落語家を触れてしまう、この近さ。しかし、この迫った距離感が何とも言えずいいものです。



さて、立川志の春さんは、経歴が異色。イエール大学卒業後に三井物産へ就職。そんな大手の有名企業にお勤めでしたが、立川 志の輔さんの落語に出会って衝撃を受けられます。三井物産をおやめになり、落語家に転身されました。この初台寄席では「髪結いの亭主」を演じられましたが、なかなか話し慣れた、安定感のある話し方。時事ネタなどもマクラに織り交ぜながら、知的なそして巧みな話し方をされ、引き込まれます。

髪結の亭主とは、妻の収入で養われている夫、という意味。今回の噺に出てくる夫は、昼間からお酒を飲んで、妻にも言いたい放題、好きに暮らしています。そこでおかみさんは、夫に私は愛されているのだろうか、心配をするようになり、夫の心を試すためにあることをしかけます・・・・・。

そして、もう一席は鈴々舎八ゑ馬さんの代書屋。八ゑ馬さん、マクラの時は若干テンポがゆっくりで世間話をするような間合い。ところが、落語の噺が始まるや否や、まるでその場に実際の場面が現れたような、生き生きとした登場人物が演じられます。ちょっとした「登場人物が乗り移ったような」感じまでいたしました。

代書屋、のあらすじはこのようなもの。とある代書屋の所に、男が履歴書の代書を依頼しにやってきます。代書屋は代筆するために様々な質問を男にしますが、この依頼人はどうにもトンチンカンな答えばかりいたします。もう、話がかみ合わず、代書も仕上がらず、四苦八苦。代書屋は頭を抱えます。さあ、どうなるのでしょうか・・。私共の財団でも、三代目 桂春團治さんの噺で「代書屋」がCD化されています。どうぞよろしくお願いいたします。


会場が手狭なことが幸いして、八ゑ馬さんを間近で見ていたところ、八ゑ馬さんにはチャーミングな八重歯があることを、私は発見いたしました。お名前の由来ですね。志の春さんにしても八ゑ馬さんにしても、若手でかつ実力派。そのような方を、近くから応援できるのは、とても楽しいことです。

さて、最後に季節の話題を。初台からほど近い代々木のとある郵便局の軒下に、ツバメが巣を作りました。ヒナが親の帰りを口をあけて待つ様子はとてもかわいいもの。それにしても、ツバメって「木」の上にも巣を作るものなのですね〜。(写真をよく見てみて下さいね。ほら、木の文字の上に巣が!)

(弘)