じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

「夏の曲」

先週土曜日の梅雨明け宣言とともに猛暑がやってきました。東京も連日最高気温が35度で、早すぎる真夏の到来にとまどっています。
先日開かれたビクター小唄まつりでは、季節がら「上げ汐」「勝ちなのり(夏場所)」「河水」「四万六千日」など、夏らしい曲が人気でした。
邦楽で夏の曲といえば、そのものずばり!箏曲の「夏の曲」があります。「千鳥の曲」「春の曲」「秋の曲」「冬の曲」とともに吉沢検校作曲の「古今組(こきんぐみ)」シリーズの一つで、古今調子という独特の調弦で、歌詞は古今和歌集からとられています。古今組のなかでは「千鳥の曲」がいちばん聞く機会が多いのではないでしょうか。手事(歌のない器楽の部分)が和風のお店のBGMで流れていることもよくあります。
四季を歌った4曲のなかで演奏会のプログラムでよく見かけるのは、「春の曲」と「秋の曲」です。どちらも聞かせどころの多い名曲ですが、お箏をやっている人にきいてみると、意外に「夏の曲」派、「冬の曲」派がいるようです。どれか1曲といわれると難しいですが、私も「夏の曲」が好きです。でも、夏の演奏会は少ないせいか、あまり聞く機会がないのが残念です。
ではCDで、と当財団発行物の作品検索をしてみたら、初代米川敏子さん自身の選曲による2枚組、9曲のアルバムに「夏の曲」と「冬の曲」が入っていました。やはりこの2曲がお好みだったのでしょうか。

じゃぽ音っと作品情報:米川敏子の世界(2枚組) /  米川敏子
また、4曲がそろったCDも2種類出ています。

じゃぽ音っと作品情報:正派邦楽会 箏曲名作選(五)/吉沢検校 /  正派邦楽会

じゃぽ音っと作品情報:箏曲 宮城喜代子の芸術 古典編 2 /  宮城喜代子
両方のアルバムをながめていたら、面白いことに気がつきました。流派が違うのでそれぞれ演奏時間は異なりますが、どちらも夏の曲は他の曲よりずいぶん短く、宮城喜代子さんの演奏では、長い順に冬の曲(18'21")、春の曲(17'02")、秋の曲(16'39")、夏の曲(13'05")となっています。
日本の蒸し暑い夏は、昔からあっさりのほうが好まれたことと関係があるかもしれませんね。それにしても今年は長く暑い夏になるのでしょうか? 先が思いやられます。皆さまもご自愛ください。

(Y)