じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

「民俗」と「民族」

ツイッターのフォロワーの方から“「民俗」と「民族」ということばは、どう違うの?”というお問合せをいただきましたので、思いつくまま、書いてみます;
民俗folkすなわち大衆の、民間伝承の、ということで、これが「芸能」や「音楽」に付く場合は、専門の芸術家による芸能や音楽ではない芸能や音楽、ということです。
民族tribe とか race とかの意味ですから、これが「芸能」や「音楽」に付く場合は、その民族の持つ/その民族特有の芸能や音楽、という意味になるかと思います。
もともと、「比較音楽学」という名称でスタートした、非・西洋クラシック音楽を研究対象とした学問が、『「非・西洋クラシック音楽」と「西洋クラシック音楽」との比較』という概念から脱却して、ひとつの民族が持っている音楽を丸ごと対象とする学問として「民族音楽学」の名称を用いるようになったわけですが、「民族音楽」という言葉は、「民族音楽学の対象となる音楽」といったような意味合いで、いつのまにか使われるようになったようです。

以下、蛇足ですが…
民族音楽学では、対象とする民族の音楽を、「民俗音楽」「芸術音楽」「宗教音楽」の3つに分類します。
民俗音楽の、中でもとりわけ、子供の音楽=わらべうたのなかに、その民族の音楽の特徴が、シンプルな形で顕著に表れる、と考えられますので、わらべうたの採集・分析は、重要な研究です。
かつて、東京芸術大学民俗音楽ゼミナールでは、小泉文夫氏の指導の下に、都内の小学校にフィールドワークを実施して「わらべうたの研究」という楽譜集・資料集を著したこともありました。

こんな説明で、ご理解いただけましたでしょうか?

(YuriK)