じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

夏の秋川!釣りました!

都心から西へ1時間ほどで「秋川渓谷」の豊かな自然を楽しむことができます。秋川は多摩川の支流の中でも最大といわれており、あきる野市から檜原村に及ぶ全長20キロほどを「秋川渓谷」と呼んでいるそうです。7月の末に私が訪れた時は、川遊びと渓流釣りがまっさかり。美しい清流の中で竹の釣竿を振ること何百回でしょうか・・・、何とか数匹のハヤを釣りました。

そして、その魚たちは河川敷で天ぷらとして揚げられて、おいしく胃袋に収まっていただいたのでした。

暑い日でした。釣りを終えると、地元の方がお野菜を持ち帰りなさいと奨めてくださって、ナスやキュウリをたくさん頂きました。そして30分ほどてくてく武蔵五日市駅まで歩きました。その間、「ああ、いいな」と思ったことがあります。都心のマンションやアパートには見られない、日本の気候に適した家の作り。何しろ日曜日の暑いまっ昼間、道行く際に目にする家ではかなり高い確率で窓が全開されています。申し訳ないながら、住民の方の昼寝姿も目にいたしました。と、それくらい家の間取りが見えてしまいます。

家の作りやうは夏を旨とすべし。冬はいかなる所にも住まわる。暑き比わろき住居は、耐え難き事なり。

というのは鎌倉末期に、吉田兼好が「徒然草」につづった一説。私が申し訳なくも覗いたお家は、いわゆる「田の字型」の間取り。夏、仕切りを取り払うことで風が通ったといいます。そして婚礼や葬儀といったものを一昔前は自宅で行う方も多かったわけですが、そのような多くの人が集まる際には、間仕切りを取り払って広い一室にできるような工夫だったと聞きます。知恵ですね。

釣りをした場所と駅を結んで、ちょうど真ん中に位置したでしょうか。「阿伎留神社」がありました。平安時代に書かれた『 延喜式神名帳 』という神社の一覧表上で、武蔵国多摩郡八座の筆頭にあげられていた由緒ある古社。あきる野市の「あきる」という字は、私個人としてはこの「阿伎留」という字だったら素敵だったのになあ、と思いました。調べてみると、1995年に秋川市五日市町が合併してあきる野市が誕生する際、「あきる」の表記については紆余曲折を経て決まったことがわかりました。

この周辺は、古くから阿伎留神社がある一方、秋留郷という土地の名称があったそう。そのため、市名を決める際、秋川市は秋留と主張。五日市町は阿伎留と主張して、意見は二分したとのこと。結局ひらがなで決着がついたそうですが、市名が批判されることもしばしばあるとか・・・。阿伎留、秋留、どちらも美しい表記です。なかなか決着がつかず平仮名となったのは、分かるような、分からないような、難しいところです。

(弘)