じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

横道萬里雄の能楽講義ノート

きょうは、先ごろ発売になった1冊の本をご紹介したいと思います。


ひのき能楽ライブラリー
横道萬里雄の能楽講義ノート【謡編】 CD付
檜書店 刊

1976〜84年のあいだ、東京芸術大学音楽学部で、横道萬里雄(よこみち・まりお)先生による、お能についての授業を受けたのは、そのほとんどが、大学に入って初めて日本音楽に触れた学生たちでした。
クラッシック音楽中心の勉強をしてきた学生たちにとって、それは別世界への誘いであり、驚きの体験の日々でした。
なんだかわからないけれども、すごいものがある!……多くの学生たちが魅せられ、惹きつけられて、その中から能楽研究者たちが育っていきました。
この本は、そうして研究者となった当時の学生たちが中心となり、授業を録音した当時のカセットテープから文字を起こして、横道先生ご本人にチェックをいただいた上で形を整えたものです(初出は檜書店の月刊誌『観世』2006年9月号〜2009年12月号)。今回の単行本化にあたっては、改訂・再編集に加え、授業中の横道先生の音声や謡などの参考音源、計42トラックの音を収録したCDが付きました。
そのサンプル音源を、こちらでお聴きいただけます→
ついつい、一緒に手を打ってリズムを取りたくなったでしょう?
さらに、音の動きやリズムを図で示すなど、目で見て理解の助けになる資料も豊富に掲載されています。
横道先生の説明は、常に理路整然として明快で、一度聴いただけでは捉えどころもないようなお能の音楽の構造が、ひとつひとつ、複雑に絡まった糸をほぐすように語られていきます。
これに先立つ序論の中では、奈良時代以前から明治期までの能と狂言の成り立ちの歴史、約1300年分がたった11ページにスッキリとギッシリと詰まっていて、ここだけでも充分読む価値あり、です!


横道萬里雄先生のプロフィールをご紹介しましょう。

1916年、東京生まれ。東京帝国大学(現在の東京大学)文学部卒業。東京国立文化財研究所研究員、同研究所芸能部長、東京芸術大学教授、沖縄県立芸術大学附属研究所教授を歴任。2011年度文化功労者となる。2012年6月20日逝去。

中学時代からお能に親しみ、旧制高校1年のときに始めた喜多流の謡と仕舞のほかに、金春流太鼓、葛野流大鼓、幸流小鼓を修め、謡も、観世・宝生・金春流を習得なさったそうです。
学びへの真摯な姿勢は生涯変わらず、91歳のときカルチャーセンターに琉球舞踊を習いに行って、主催者の方が驚かれた、というエピソードも。この話題を掲載したブログの管理者からお許しをいただきましたので、リンクを貼ります。お人となりが伝わると思いますので、ぜひお読みください。横道先生のお顔も御覧になれます。ブログ記事『横道萬里雄さんが生徒さん』


この本の最後の行は、
これで謡の概説を終わります。続編で謡と囃子の関係や囃子事の話をいたします。
と結ばれています。現在制作中という続編【囃子編】が、いまから楽しみです。


檜書店ホームページ
トップページ左上「商品検索」に書名「横道萬里雄の能楽講義ノート」を入力して検索実行、さらに書名をクリックして詳細説明画面を開くと、レビューも読めます。


(YuriK)