じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

公開講座「昭和初期上方落語の口演記録」

東京文化財研究所から、無形文化遺産部の公開学術講座のお知らせが届きましたのでご紹介します。

「ニットー長時間レコード 昭和初期上方落語の口演記録」というものです。特殊な規格で製作されたレコードのため再生が難しく、今では半ば忘れ去られている上方落語の貴重な歴史的音源が、復元再生されて聞けるとのことです。
平成25年10月5日(土) 午後2時 〜 5時(開場1時30分)、東京国立博物館の平成館大講堂(博物館の西門からお入りください)で。入場無料、先着350名まで(申し込み不要)という魅力的な講座です。詳しくはこちらをご覧ください。→http://www.tobunken.go.jp/~geino/kokai/13kokai_inf_.html

下記のプログラムのとおり、この分野に詳しいナビゲーターの講演もあります。学術講座というとカタいイメージですが、上方落語ファンにとって聞きのがせないチャンスでしょう!

「ニットー長時間レコード 昭和初期上方落語の口演記録」
プログラム

講演1 東京文化財研究所収蔵「特殊再生装置を要する音盤」
 飯島 満 (東京文化財研究所

講演2 「ニットー長時間レコード」の再生
 大西 秀紀 (京都市立芸術大学

講演3 上方落語の特質と戦前の動向
 中川 桂 (二松学舎大学)

講演4 ニットー長時間レコードに聴く昭和初期の上方落語
 岡田 則夫 (大衆芸能研究家)

主催・問合せ先 東京文化財研究所 無形文化遺産
e-mail: mukei<a>tobunken.go.jp <a>を@にして下さい。


チラシ裏の説明には次のようにあります。少し長いですが、このレコードについてわかりやすく解説しているので引用します。

20世紀前半、最も一般的な音声メディアであったSPレコード(10インチ盤78回転)は、収録時間が片面で3分前後という短さでした。そのため、SPレコードが普及して行く一方で、収録時間をより長くする方式が様々に考案されることとなりました。
大正末から昭和初期にかけて、大阪のニットーレコード(日東蓄音器株式会社)から発売された長時間レコードも、そのひとつです。片面で10分程の収録が可能でした。ところが、特殊な規格(線速度一定)で製作されていたため(通常のレコードは角速度一定)、専用の機器を使わなければ、正規の再生音が得られません。発売開始から数年で生産停止となったニットーの長時間レコードは、現在では普通に聞くことすら大変な難事となっています。
今回の公開学術講座では、ニットー長時間レコードの中から、上方落語の録音を復元再生した音声でお聞きいただきます。いままさに隆盛を誇る上方落語、その礎を築いた落語家たちが吹き込んだ、半ば忘れ去られていた口演記録です。大衆演芸であると同時に伝統芸能でもある落語にとって、歴史的な音声資料がになう意味合いについても、再考する機会にしたいと思います。

当財団も、明治期からの録音資料は近代の文化遺産として貴重なものであるという認識のもと、録音資料のアーカイブを進める活動に関わってきました。
その一つがHiRAC(歴史的音盤アーカイブ推進協議会)で、国内で製造された明治以来のSPレコードや金属原盤等に収録された音楽・演説・演芸などのデジタル化を進め、国会図書館デジタルアーカイブに収めてきました。著作権等の保護期間が満了した音源については、インターネットで聴くことも可能です。
HiRACとしてのアーカイブは昨年度で一区切りとなり、5万音源近くのデジタルアーカイブが実現しましたが、実際に発売されたSPレコードはその倍くらいあったのではないかという見方があります。そのうえ、この長時間レコードのようにSPレコード以外にも貴重な音源があることを考えると、お宝はまだまだ埋もれていそうです。今の時代に生きる私たちが、なんとかして歴史的音源を後世に伝える橋渡しができないかと願います。
国会図書館のデジタル化資料は、専用ページ「れきおん」から聴くことができます。またこちらのページでは「音源紹介」として、SPレコードに造詣の深い各氏が音源を紹介しながら読み物としても面白く記事を書いています。上記のプログラムの大西さんと岡田さんもこちらに執筆していますので以下にご紹介します。

邦楽の近代 ―義太夫節を中心に― 大西秀紀(京都市立芸術大学日本伝統音楽研究センター非常勤講師)
寄席話芸のSPレコード 岡田則夫(大衆芸能研究家/SPレコード収集家)
「歴史的音源」に収められた金沢蓄音器館のレコード 八日市屋典之(金沢蓄音器館館長)
大衆歌謡を築いた人たち 倉田喜弘(芸能史家)
日本の子供の歌発達史 〜「わらべうた」からSP盤の終焉まで〜 長田暁二(音楽文化研究家)
政治・戦争とレコード 郡修彦音楽史研究家)

ここに出てくる音源にはインターネットでは公開されていないものも含まれますが、国会図書館のほか、全国の公共図書館・資料館(海外ではドイツの国際交流基金ケルン日本文化会館図書館)でも聴くことができます。こちらからご確認ください。→館内限定公開音源を聴くには? 
お近くの図書館がこのリストにありましたら、ぜひ音を聴きながら記事をお楽しみください。
ご紹介した講座もそうですが、20世紀前半の先人たちの貴重な声や演奏が聴けるチャンスです。

(Y)