じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

落語の世界は深い!part11

新年あけましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願い致します。昨日は、仕事始め。お昼から神田明神へとお詣りに出かけ、あれやこれやと願掛け。と思いましたが、誓ったことはただひとつ。「家内安全」。私的にはいろいろあった昨年でしたので、とにかく平穏無事をお願いした次第です。
お正月気分から抜け出し、一日でも早く社会復帰(!?)しなければなりませんが、世の中にはそんなお正月気分を一月いっぱい、大いに満喫できる場所があります。それは、「寄席」。一月は寄席、そして出演する芸人さんにとって、一年の始まりであると共に、大切な稼ぎ時でもあります。お客さんにとっても、例月とは違って、多くの芸人さんを一度に観られる特別な公演内容となっています。
寄席は通常、昼の部と夜の部の2部構成。しかし、元旦から10日まで(初席)は芸人さんの顔見世のような興行で、多くの芸人さんが入れ替わり立ち代わり出演します。つまりは、通常の2部構成では時間が足りないので、ほとんどの寄席が3部構成となっています。ただ、一人ひとりの持ち時間が少なく、噺も短いので、もの足りなさを感じるかもしれませんが、お正月の寄席の雰囲気を楽しんでみたいと思えば、初席を観るのもよろしいのでは。というわけで、本日のブログは、「お正月」に関する落語のご紹介。
まずは、「初天神」。弊財団からは、四代目 桂 文團治師匠の作品があります。
◆ ビクター落語 上方篇 四代目 桂 文團治(3) 初天神/いかけ屋/肝潰し
初天神にお詣りに出かけようとするところに、子供が帰ってくる。どこかに連れ出すと、必ず「あれ買って、これ買って」とうるさいから連れて行きたくないと拒むが、何か買ってくれとは言わないから連れていってくれと頼む子供。約束を守るのであればと、やむをえず連れ出すのだが、結局はいろいろと買わされる羽目に。しかし、凧を買ったところ、熱中したのは親父のほうで。。。という噺。
1月25日、「初天神」の賑わいを描いたおなじみの話。文團治は話を手短にまとめることが得意であった、とのこと。しかしこの「初天神」の録音では、マクラを全く省いて、出かける前のやりとりや、凧揚げの様子などを克明に演じており、いたずら盛りで、ちょっと大人びた子どもの姿と、それに振り回される父親をいきいきと描いています。
続いての噺は、「羽団扇(はうちわ)」。ここでは、二代目 三遊亭円歌師匠の作品をご紹介。
◆ ビクター落語 二代目 三遊亭円歌(7) 茶釜の喧嘩/龍宮/羽団扇/てれすこ
いい気持ちで寝ている亭主。それを見ていた女房が、何の夢を見ているのか知りたくなって、亭主を起こす。しかし、起こされた亭主は、「夢を見ていない」と、夢を見たことを覚えていない。「私に言えない夢をみたんでしょ!」と女房は怒るが、亭主は「夢は見ていない」の一点張り。そこへ通りかかった男が間に入る。が、実はこの通りすがりの仲裁人は天狗。意固地になっている亭主を空中高く放り投げ、そのまま鞍馬山へと連れて行ってしまう。その後七福神の宝船へとたどり着き。。。という噺。
この作品では、開口一番「あけましておめでとうございます」と円歌は言っています。これは元旦に放送された録音だからです。この噺は、初夢や七福神が出てくるので、お正月にふさわしい噺とされていますが、正月に限定されているせいか、やり手の少ない噺だそうです。円歌の時代には、他にやる人がいませんでしたが、その後、立川談志師匠が演じている、ということです。
「笑う門には福来たる」。いつもニコニコ笑って暮らす家族の家には、自然と幸福がめぐってくる、という意味。そうですね。私も早速寄席に行って、身体中に笑いを染み込ませてこようかな、と思っています。というわけで、今回のブログはここまで。

(よっしゃん)