じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

養生訓

エー・アール・ティ(株)発行の雑誌「江戸楽」をご存じでしょうか。日本の粋であったり、伝統の良さだったりを毎度掘り起こして、オールカラーの記事に仕立てられています。

こちらの写真はNO.55。一昨年9月のNo.41は養生訓(ようじょうくん)を取り上げていました。当時も今も、毎日の「ごはん(食事)」に興味のある私は、先日ついに養生訓の現代語訳を読んでみました。

(講談社学術文庫 (577)) [文庫] 貝原 益軒 (著), 伊藤 友信 (翻訳)

ここで養生訓とは何ぞや、と思われている方へ少々ご紹介します。養生訓、は江戸時代に貝原益軒によって書かれた書物。当時、如何に長寿でいられるかというのが、人々の関心ごとの一つであったとの事。様々な健康に関する書があったようですが、この「養生訓」は今に読み継がれるロングセラーです。なお、Wikipedia貝原益軒」より、以下引用いたします。

貝原 益軒(かいばら えきけん、1630年12月17日(寛永7年11月14日) - 1714年10月5日(正徳4年8月27日))は、江戸時代の本草学者、儒学者。明治時代に西洋の生物学や農学の分野がもたらされるまでは、日本史上最高の生物学者であり農学者である。(中略)

幼少のころから読書家で、非常に博識であった。ただし書物だけにとらわれず自分の足で歩き目で見、手で触り、あるいは口にすることで確かめるという実証主義的な面を持つ。また世に益することを旨とし、著書の多くは平易な文体でより多くの人に判るように書かれている。70歳で役を退き著述業に専念。著書は生涯に60部270余巻に及ぶ。主な著書に『大和本草』、『菜譜』、『花譜』といった本草書。教育書の『養生訓』、『和俗童子訓』、『五常訓』。思想書の『大擬録』。紀行文には『和州巡覧記』がある。


貝原益軒座像(福岡市)
実際に読んでみると、伊藤 友信氏の翻訳がよいこともあり、とても分かりやすいです。どのように健康を保つかに焦点があてられているのですが、その言及は歯の磨き方、入浴の仕方から、日々の心の持ちよう、運動の推奨、はては「お呼ばれした時は、程よい時間に暇乞いするべき」といった事にまで至ります。そう考えると、本書は『生活の指針』のようなものかなと思われます。また、今でも枇杷や大根といった植物を使って、病気に対処する民間療法などありますが、そうしたものの裏付けになるような情報も、本書の中に発見できます。


貝原益軒

食養に関する指針も多く書かれています。飽食の現代日本。流通もはるかに発達し、日本の風土では育たない食べ物もどんどん輸入されます。欧米の食文化も浸透し、外食やコンビニでも食事を済ませられる世の中。チョイスはいくらでもあるので、自分の中で「食に関する秩序」を持っていないと如何なる食生活もありえるようになりました。養生訓に書かれた通りに食生活を送る必要はないですしそうすることも実際難しいと思いますが、一つ「こうあるのが望ましい」という価値観を持って日々の生活を営むのはよいかもしれません。生活を見直して痩せたい、とかちょっとした体の不調があるので除きたいといった場合でも、生活をどう変えるとベターか参考になるのではないでしょうか。どうぞ、ご一読くださいませ。

(弘)