じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

絹はスゴい

暦の上の春はとっくに来ているのに、大変な大雪が日本各地に降りましたね。私は、相変わらず寒くて、寒くて、重ね着・厚着をして過ごしております。重ね着といえば、ヒートテック等、最新テクノロジーを応用した化学素材が有名ですが・・・ 一方で自然素材の「絹」の靴下や下着などで防寒する方々も多くいらっしゃいます。
「冷え取り健康法」とも言いまして、実は私がそれを知ったのも、塩野屋さんという京都西陣に14代続く織元の店舗(横浜で臨時出展されているときでした)に、たまたま寄ってお店の方と楽しくお話したからでした。

伝統芸能を自ら演じられる方は「絹」に対して、とても身近に感じられるかと思います。和楽器の弦にも使われる絹。(是非、こちらのブログもお読みください。『国産絹箏弦を聴く会』のレポートです)そして何より着物といえば絹、です。長襦袢がポリエステルでは、冬着るのに寒いですが、絹製であれば温かい、とは皆様、一堂に頷かれることと思います。

事実、絹には様々な効用があるといわれています。綿の1.5倍ともいわれる吸湿、放湿、速乾。またその繊維は大変細く、温かい空気が中で保たれ、高い保温性があります。美容グッズとして売られるほど美肌効果もありまして、どうやら皮膚細胞を活性化させるというアミノ酸で形成されていることがその理由。その他、紫外線カット効果があったり、保湿効果があったり、デトックス効果があったり、自浄効果があったり、などなど書ききれない程の効用があるといわれています。そのため寒いこの時期、肌が弱かったり、冷え症だったりする方を中心に、直接肌に触れてもやさしく、温かい絹を服の下に身に着ける、民間療法が知られています。

塩野屋さんでは、織元として300年もの間、絹素材の良さを実感しながら、その時々の時代に求められた商品を開発し販売されてきたのですね。100%国産の絹をお使いとのこと。これがどれだけ希少なのかは、この数字を見れば分かるでしょうか。日本の絹自給率はなんと0.5%だそうです。

ため息がでるほど少ない....でも元もとは有数の産地でした。昭和35年くらいまでは日本の養蚕業も元気で、その品質もお墨付き。愛媛の絹布が「昭和24年にイギリスのエリザベス女王戴冠式の式典用御料糸の特別注文を受ける」までのものでした。しかし、残念ながら、その後、国の政策により輸入品に取って代わられ状況が激変することとなります・・・・。

最後に、私が塩野屋さんに読むことを勧められた書籍「着物という農業 / 中谷 比佐子/三五館」をご紹介いたします。着物とその布を通して、日本の壮大な歴史をみるような、とても考えさせられる本です。

(弘)