じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

宮城道雄と日本民謡

今年(2014年)は「現代邦楽の父」と呼ばれる宮城道雄の生誕120年に当たります。各地でいろいろな記念行事が催されていますが、その一つ、宮城道雄記念館で開かれる「演奏とお話による 宮城道雄と日本民謡」をご紹介します。

宮城道雄は1894(明治27)年生まれ、1956(昭和31)年没。光を失った8歳のときから地歌箏曲の修業を積み、演奏家として活躍する(箏だけでなく三味線の名手でもあった)とともに、14歳から作曲を手がけ、生涯に350以上の作品を残しました。
当時は「新日本音楽」とよばれていた宮城道雄作品の前と後で、邦楽のあり方は劇的に変わったといわれています。宮城は古来の地歌箏曲を極めた一方で、レコードなどを通して幅広く西洋音楽に親しみ、伝統的な邦楽にはない3拍子や、ロンド形式・カノン形式を取り入れた曲、コンチェルトやカンタータの様式による作品と、新しい試みをつぎつぎに発表しました。
今では箏曲を代表する作品となった「春の海」も、発表した当時は斬新すぎてあまり好評ではなかったそうです。従来の箏曲は、箏や三味線の演奏に、ときとして尺八を加えて合奏を楽しむというものであったのに対し、「春の海」は箏だけでも尺八だけでも成り立たない、対等な二重奏曲だったからです。それまでの邦楽の常識では考えられないことでした。
さて、今回とりあげられる宮城道雄の「北海民謡調」と「三つの民謡調」はいずれも1954(昭和29)年の作曲で、「北海民謡調」は「ソーラン節」と「江差追分」、「三つの民謡調」は「お江戸日本橋」「会津磐梯山」「木曽節」を主題として変奏を展開しています。
「三つの民謡調」について、吉川英史氏がLPレコード「宮城道雄大全集」(1974年、ビクター音楽産業)の解説で次のように記しているのは興味深いことです。

和洋融合など、革新的な創作活動を意欲的に行ってきた宮城道雄が、晩年の外遊後に、民族音楽への志向の方向を示した作風を代表する作品として注目される。わが国古来の豊富な民族音楽の遺産を採り上げて、宮城独特の器楽合奏形式に処理することによって、音楽を通じて日本人の国民性を理解しようとする外国人の鑑賞の対象ともなり得る曲の一つである。

今度の「演奏とお話による 宮城道雄と日本民謡」では、千葉優子さんのナビゲートのもと、お箏をよく知っている人もそうでない人も、宮城道雄の豊富な世界に触れることができると思います。元になった民謡との聞き比べはめったにないチャンスです。人気の民謡歌手、藤みち子さんの歌声も楽しみです。
さらに当日は、宮城道雄の「甘楽民謡」という作品が復曲披露されるそうです。民謡も作曲していたのでしょうか? どんな曲なのか、どんな経緯で復曲が実現したのか、その辺りも面白そうです。

「演奏とお話による 宮城道雄と日本民謡

[日時] 2014年4月19日(土)午後2時開演(1時30分開場)
[会場] 宮城道雄記念館(東京都新宿区中町35 神楽坂・毘沙門天横入る)
[入場料] 2,700円(要予約) 当日売3,000円
[お申し込み、お問合せ] 宮城道雄記念館  TEL:03-3260-0208

[お話] 千葉優子(宮城道雄記念館資料室室長)
[演奏曲目]
民謡
江差追分」「会津磐梯山
 歌:藤みち子
 尺八・笛:米谷和修
 三味線・掛声:藤本松和

宮城道雄作曲
「北海民謡調」「三つの民謡調」「春の海」「甘楽民謡」(復曲)
 箏・十七弦・胡弓:村田章子 多々良香保里 小畔香子 大嶋礼子
 尺八:武田旺山

直前のご案内となってしまいましたが、土曜日の午後、神楽坂のお散歩を兼ねて訪ねてみてはいかがでしょうか?

(Y)