おかげさまで5月21日に発売された「村治佳織 コレクション 1」(SACD4枚組)は、ご好評をいただいております。今回はアルバム「シンフォニア」のライナーノーツをご紹介いたします。
シンフォニア
〈 録音:1996年3月19〜21日 発売:1996年7月24日 〉
3枚目の録音には時間が必要でした。コンサート活動も更に増え、今までとは比べられないほど超多忙になった彼女は、ここで初めて「ギタリストとは?」、また、「自分の音楽とは?」今までは考えもしなかったことに悩み迷い、これまで順調に進んできた演奏家としての歩みに、初めてブレーキがかかり、苦しんでいたのではないかと思います。結果、「このアルバムは自分が何のためにCDを出すのか?」の一つの明確な解を表わしたものになったのではないか、と思います。その一つがアルバム全曲の半分に当たる8曲を自身で編曲したこと。もう一つはジャケットの写真です。それまでの2枚に関してはアルバム・イメージから写真まで全てを私が決めていました。
ところが、録音が終わってしばらく経ったある夜、突然私の自宅に彼女から電話がありました。今回の写真はモノ・クロ写真でいきたいのです。地味なジャケットになってしまい、売り上げを心配する私の意見には全く耳を貸そうとはせず、彼女の初めての、不退転の強い意志が見て取れました。その日は、今から考えると、彼女が18歳の誕生日を迎えた直後のことだったように思います。ともあれ、そのような前向きな大きな変化の表れが、彼女にとって初の海外公演の成功です。その年の5月下旬から6月にかけてイタリアのトリノで行われたイタリア国立放送交響楽団の定期演奏会での、彼女のアランフェス協奏曲の演奏に会場は驚き、沸き立ち、後日、その模様はイタリア国内だけでなく、他のヨーロッパ諸国にも放送されたのです。
(野島友雄)