じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

村治佳織 SACD コレクション2  part 3

今回は、6月19日に発売した作品「コレクション2」の中からディスク3の「レスプランドール」のライナーノーツをご紹介いたします。

[:W400]

レスプランドール
〈 録音:2001年7月21,23日スペイン・ライブ、2002年2月23,24,25日 発売:2002年4月24日 〉
2001年、23歳になった村治はスペインにいた。この年6月中旬から始まるアランフェス協奏曲のハイヴィジョン撮影という大プロジェクトの準備もあって、その少し前からホームステイをしていたのだ。2週間の過酷な状況でのDVD用映像収録を最高の仕上がりで終えた後、そのまま7月後半からのスペイン・デビューに備えホームステイを続けていた。こうしたスペインに溶け込もうとする彼女持ち前の強いプロ根性の結果であろうか、迎えたバレンシアでのオーケストラ・リハーサルでは、流ちょうなスペイン語でメンバーと直に論じ合う、誠に頼もしい姿が見られた。実は、この華々しいスペイン・デビューコンサートもロドリーゴ氏からのプレゼントと言える。何故ならば、ロドリーゴの「ある貴神のための幻想曲」を共演するオーケストラのコンサート・マスター、アグスティンさんの奥様はロドリーゴの御嬢さんであった。いよいよ始まったスペイン・コンサート・ツアーから、村治初のライブをメイン収録したのは、会場の中で最も響きのよいハーベアの教会である。満席、総立ちになった感動的な演奏に劣らず、良い録音ができたのは天井の高い石造りの教会のお陰である。このアルバムは評判の良かったロドリーゴ曲集の2枚目として企画されており、翌2002年、再び、彼女はスペインに飛び、マドリッドのスタジオで3日間をかけて、残りのソロ8曲を収録、完成した。ここでは、彼女の切なる希望でファンダンゴを再録音している。アルバム「パストラル」での収録から5年、この間、生前の作曲者ロドリーゴに会い、その国の人々と生活し、直に話ながら感じ取ったスペインが、どれほど大きなものであったのか、この一曲をお聴き頂ければ解っていただけるのではないだろうか。
                                                       (野島友雄)

(Yuji)