日本伝統文化振興財団制作のCD「雪墨 YUKISUMI/藤本昭子 佐藤允彦」(2020年4月22日発売)が、令和2年度(第75回)文化庁芸術祭レコード部門の大賞を受賞しました。
地歌箏曲の藤本昭子さんとジャズピアノの佐藤允彦さんという驚くべき組み合わせで、日本の古典音楽、地歌(じうた)を演奏したアルバムですが、その組み合わせの妙により「ゆるぎない地歌の真髄を際立たせることに成功している」との評価をいただきました。
受賞理由
地歌箏曲とピアノという異次元の組合せでありながら、綿密な計算と両者の豊かな感性によって新たな世界を見事に提示した。「手付」ともいえる佐藤充彦の優れたピアノパートの作曲とそれに呼応する録音、そこに藤本昭子の確かな歌と効果的に控えられた三弦という足し算と引き算の妙によって、ゆるぎない地歌の真髄を際立たせることに成功している。
CDタイトルの「雪墨」について藤本昭子さんは次のように述べています。
「雪墨」は白銀と墨痕を端的に表す言葉で、真っ白な新雪の上に落とした墨が滲んでいくように「古典と現代」、「様式と自由」、「東洋と西洋」など対極にあるものが出会い、それぞれの輪郭がやがて溶融した果てに、本来の姿がはっきり浮かび上がってくることをイメージしての命名です。古典は今も輝き続けています。「雪墨」は、新たな角度から古典の真価と可能性に光を当てることを意図して企画しました。
藤本昭子さんは日本伝統文化振興財団賞第7回の受賞者です。今年10月18日に開催された「第17回 藤本昭子演奏会」(紀尾井小ホール)で、文化庁芸術祭音楽部門の大賞を受賞されました。同じ年に音楽部門と、演奏に参加したレコード部門の両方で大賞をとる例は、おそらく初めてだろうとのことです。おめでとうございます!
地歌ファンの方も、また地歌にはあまり馴染みがないという方も、ぜひこのCDを聴いてみていただきたいと思います。
惜しくも受賞は逃しましたが、当財団からほかに次のCD3点が今年度の芸術祭に参加しています。あわせてご紹介します。
(Y)