じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

はじめての邦楽

7月30日(土)国立劇場小劇場で「邦楽へのいざない はじめての邦楽」という催しがありました。チラシがいつもの国立の主催公演とはちょっと雰囲気が違うポップなノリです。
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3部に分かれていて各公演の30分前にはロビーで和楽器の体験コーナーが設けられていました。
1)[11時の部]は、若手演奏家グループ「AUN J クラシック・オーケストラ」の皆さんによる「親子で楽しむ日本の音」。
2)[1時の部]は「語り、唄う声の世界」。
3)[4時の部]は「響きいろいろ、邦楽器の魅力」。
午後の二つの公演に行ってきました。どちらもナビゲーターは歌舞伎俳優の尾上松也さん。姿も声もよく、名案内役に「音羽屋!」の声がかかっていました。
仕事がら、邦楽は「はじめて」ではないのですが、演奏家によるさまざまな聞き比べや解説に新しい学びや発見がありました。
気鋭の演奏家ばかりなので、曲の演奏をもっとたっぷり聞きたかった、という気持ちが残りましたが(近くの席で、やはり同じ感想をもらしている女性グループがいました!)、邦楽への入口としては、そう思わせるぐらいがちょうどいいのかもしれませんね。
それぞれのプログラムは次のとおりです。

「語り、唄う声の世界」
義太夫節
浄瑠璃 竹本越孝  三味線 鶴澤三寿々
 「傾城恋飛脚」 新口村の段より
新内節
弾き語り 新内剛士  三味線 新内仲之介
 「明烏夢泡雪」浦里部屋の段より
長唄
唄 東音味見純  三味線 東音山口聡 ほか
 「五郎」より


「響きいろいろ、邦楽器の魅力」
〈箏〉
遠藤千晶
 「手事」第三楽章
〈囃子〉
望月太三郎 ほか
 「乱序・クルイ」
〈三味線〉
今藤長龍郎 ほか
 「流れ」

「語り、唄う声の世界」(1時の部)のテーマは「声」で、義太夫節新内節長唄の聞き比べ。
まず女流義太夫の竹本越孝(こしこう)さんが豪快な武士の笑いを披露して、客席も一緒に声を出すところから始まりました。義太夫三味線では武士の登場する場面と娘の場面とでは弾き方がまったく違うのだそうで、その音色の違いを聞きとることができました。
次は新内流しが客席から登場。ふつう三味線二挺で演奏されますが、新内剛士さんの説明で本手の三味線と上調子(うわぢょうし)の三味線を別々に聞かせてもらい、二つの音色がずいぶん違うこと、二挺合わせて初めて新内独特の味わいが出ていることがよくわかりました。上調子で使う小撥は、ギターのピックほどのかわいらしい撥で、独特の華やかさとはかなさのポイントであると知りました。
長唄は東音味見純さんの解説。長唄は特色がないのが特色、という説明に戸惑いましたが、劇場音楽であるということ、いろいろな音曲を取り入れていることから、幅広いという意味でもありました。代表的な曲の声の表現の違いを実際に聞き比べることができたほか、高音部分を裏声ながら力強く歌う工夫がとても印象に残りました。

「響きいろいろ、邦楽器の魅力」(4時の部)のテーマは「楽器」。開演前にはお囃子、長唄、お箏の体験コーナーがあり、それぞれ列ができていました。
お箏は遠藤千晶さんで、まずさまざまな奏法を説明するために宮城道雄作曲の「汽車ごっこ」(部分)と「線香花火」を演奏。松也さんに「六段」の最初の部分を指導する場面もありました。
お囃子は望月太三郎さんの説明。太鼓、大鼓、小鼓、笛の四拍子のほかに、歌舞伎や舞踊の黒御簾(くろみす)で演奏される多様な楽器を次々に紹介し、松也さんとの掛け合いも楽しく、客席がなごみました。
最後は三味線で、長唄の今藤長龍郎さんが担当。楽器や奏法を説明したあと、5名の三味線方の演奏で、「娘道成寺」から「チンチリレンの合方(あいかた)」を披露して客席を引きつけました。

ところで、話は変わるのですが、夏に国立劇場に行く機会があると、ひそかに楽しみにしていることがあります。国立劇場の裏の道に、みごとなブーゲンビレアが咲いている一画があるのです。

今年の夏はどうかな?と立ち寄ってみると、うれしいことにたくさんの花をつけていました。都心にいながらここだけ南国のようです。例年9月頃まで咲いていますので、国立劇場の行き帰りに探してみてはいかがでしょう。

(Y)