じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

東燃ゼネラル音楽賞に清元美治郎さん

11月29日、サントリーホールのブルーローズ(小ホール)で「東燃ゼネラル児童文化賞・音楽賞」の贈呈式がありました。

ちょっと聞き慣れない賞ですが、児童文化・音楽文化の発展・向上に尽くしてきた方々に贈られる「エクソンモービル児童文化賞・音楽賞」が改称されたものです。この賞を運営してきたのは石油製品を扱うエクソンモービル・ジャパングループですが、2012年6月に東燃ゼネラルグループとなったのに合わせて変更になったとのこと。創設時から長らくは「モービル児童文化賞・音楽賞」と称していました。
名称が変更になっても「私たちはこの賞の持つ『一時の流行に惑わされることのない選考を通して、わが国の児童文化、音楽文化の発展、向上に尽くしてこられ、今後それぞれの分野の将来を担われる方々をたたえ励ましたい』という意義を大切に継承してまいります」ということです。(詳細はこちらをご覧ください。→◆
音楽賞は今年で42回になりますが、邦楽部門では第1回(1971年度)の尺八の山口五郎さんをはじめ、錚々たる演奏家や団体、研究家などが受賞していて、その後、人間国宝となった方も数多くいます。今年の受賞者は次の方々です。

第 47 回東燃ゼネラル児童文化賞受賞者
加古 里子(かこ さとし) 児童問題研究家

第 42 回東燃ゼネラル音楽賞受賞者
邦楽部門 清元 美治郎(きよもと よしじろう) 清元 三味線方
洋楽部門本賞 舘野 泉 (たての いずみ) ピアノ
洋楽部門奨励賞 山崎 伸子(やまざき のぶこ) チェロ

邦楽部門を受賞された清元美治郎さんは日本伝統文化振興財団賞の第3回受賞者です(→http://japan.japo-net.or.jp/cultivate/recipient/recipient_3.shtml)。ごあいさつのなかで、清元は浄瑠璃が主で三味線は脇役のようなものだが、そこに光を当ててくださってありがたいと話していらしたのが印象的でした。贈賞理由は次のとおりです。

清元美治郎氏は清元節の代表的な三味線方で、歌舞伎や舞踊の公演に欠かせない清元節の演奏において、中心的な役割を果たしている音楽家である。その音楽の基礎には、戦前から平成の初めまで活躍した清元寿国太夫から学んだ古典的な演奏様式がある。清元美治郎氏は、その基礎をもとに、優れた独自の音色と柔軟な音楽性を身につけ、現在では清元節の演奏を導く役割を果たしている。また、古典的な作品の復元と新しい作品の創作にも力を発揮し、さらに、他のジャンルの音楽家との共同作業も積極的に行うなど、現代の邦楽界で大きな責任を果たしている。なお、荻江節においても、荻江露延の名前で三味線方として活躍している。

贈呈式に続いて、児童文化賞を受けられた加古里子さんの活動の紹介とご本人のお話を交えたビデオの上映があり、続いて音楽賞の3名の方の演奏会となりました。
最初に登場した清元美治郎さんの記念演奏は清元の「座頭」。浄瑠璃は清元美寿太夫さんで、昨年の当財団のチャリティ公演で素晴らしい演奏を聴かせてくださったコンビです。あの日の感動がよみがえりました(→公演情報:第十五回日本伝統文化振興財団賞贈呈式/日本伝統文化振興財団賞歴代受賞者による 古典芸能の夕べ 東日本大震災チャリティ公演【日本伝統文化振興財団 じゃぽ音っと】)。写真は昨年、紀尾井ホールでのチャリティ公演の際のお二人です。

共演は清元志佐雄太夫さんと、三味線にはやはり財団賞受賞者の清元栄吉さんというメンバーで、洒落た「座頭」をたっぷりと聴かせました。
贈呈式と演奏会には、応募した一般の方も100名招待されていました。洋楽部門の受賞者は左手のピアニストとして活躍を続ける舘野泉さんと、チェロの第一人者、山崎伸子さんで、こちらのファンの方も多かったと思います。そんな皆さんにとっても清元の演奏を聴くいいチャンスになったのではないでしょうか。
清元美治郎さんのますますのご活躍をお祈りします。

終演後、外に出るとアークヒルズのイルミネーションがきれいでした。いよいよ師走ですね。なにかと気ぜわしい時期ですが、皆さまよい年末年始を迎えられますように。

(Y)