じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

村治佳織 SACD コレクションI part 4

おかげさまで5月21日に発売された「村治佳織 コレクション 1」(SACD4枚組)ご好評をいただいております。今回はアルバム「パストラル」のライナーノーツをご紹介いたします。

パストラル
〈 録音:1997年7月31〜8月2日 発売:97年11月21日 〉
このCDは彼女の強い希望で当時、特に魅了されていたアランフェス協奏曲の作曲者として知られる、ホアキン・ロドリーゴのギター・ソロの作品を集めたものでした。ところが、この作品によって彼女の内に秘めていたものが一挙に、開花されたのです。そこには、あの情熱の匂い立つスペインが見事に表現されていました。まさに、新たな村治佳織の誕生です。自分の進むべき道がはっきりと見えた彼女は、レコーディングが終わるや否や、初の留学地であるパリへと旅立ちました。ところが、ここでまた彼女の運命を大きく変えることになる更なる出来事が起きたのです。これらCDの中で解説を書いておられるスペイン音楽の権威、濱田滋郎先生が、この「パストラル」に感動して、何と作曲家のロドリーゴ氏にCDを送って下さったのです。そして、翌98年10月ロドリーゴ氏から彼女のCDに対して感謝と賛辞が届いたのです。これを受け取った彼女は、すぐさま行動を起こし、翌99年1月、スペインはマドリードに住むロドリーゴ氏宅に向いました。そこで、彼女は巨匠を目の前に、CDに収められている「古風なティエント」や「小麦畑で」を弾く最大の幸せを授かったのです。だが、奇しくもその年の夏、ロドリーゴは97年の生涯を閉じたのです。
                                                       (野島友雄)


(Yuji)