じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

「アトムの足音が聞こえる」

来春ユーロスペース他で公開予定の映画「アトムの足音が聞こえる」冨永昌敬監督)の試写会へ。国産のTVアニメシリーズ第一号といわれる「鉄腕アトム」の音響デザインを担当された大野松雄さんのドキュメンタリー映画です。

“アトムの足音”をお聴きになりたい方は、当財団から発売しているCD鉄腕アトム・音の世界」をご紹介しますHMVのサイトでは全トラックを最初の45秒ずつ試聴できます。→
ピコピコ風に聴こえるこのかわいらしい音。デジタル系の電子音かと一瞬思いますが、実はオープンリールのテープレコーダーを使って加工したアナログの音なのだそうです。
このアトムの足音や飛行するときの音もそうですが、宇宙空間での音、あるいはエネルギーが充電していくときの音(機動戦士ガンダム宇宙戦艦ヤマトなどのアニメーションでもおなじみ)といった音ってよくよく考えると、実際には存在しない。
でも、その音の出来によって作品の臨場感や迫力がまったく違うものになる……そんな“この世ならざる”音を創り出してきたクリエイターたちにスポットを当てつつ、そんなクリエイターたちから“天才”と称えられた伝説の音響デザイナー、大野松雄さんの実像を追い、世に問うてきた作品を紹介するとともにそのワン・アンド・オンリーの世界に迫る作品に仕上がっています。
昨年7月赤坂・草月ホールで開かれた「大野松雄〜宇宙の音を創造した男〜」(第25回〈東京の夏〉音楽祭2009 日本の声・日本の音より)を観に行きました。
自分が鮮明に覚えているのは、DJがターンテーブルでスクラッチするかのごとく(むしろ大野さんのほうが先だと思うけれど)、大野さんがテープデッキのリール部分を両手で操作することで生まれた音がエコーとともに会場を浮遊していて、まるで音の万華鏡のような雰囲気で、異空間にいる錯覚におそわれたこと。
映画ではこのイベントの貴重なシーンもあり、実際に行けなかった方にはきっと追体験ができるはず。

というわけで、身近でありながらどこか不思議な「音」の世界に魅せられているすべての方に、ぜひ一度ご覧いただければと思います。

映画公開の日程が決まりましたら、またお知らせさせてください!

(じゃぽ音っと編集部T)