じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

アベンジャーズ→北欧神話→ニーベルングの指環

この夏・・まだまだ暑い盛りに映画『アベンジャーズ』(2012)を観ました。外にいても暑いしちょうど映画館に入って上映されていたものをセレクトした、というのもあるのですが、以前CDシリーズ『伝説の歌声』をこのブログでご紹介したときにも登場した女優:スカーレット・ヨハンソンをちょっとみたかったのですw
アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン|映画/ブルーレイ・デジタル配信|マーベル|Marvel|・・・トレイラー映像(注意!音が出ます)
じゃぽ音っと作品情報:ノイズレスSPアーカイヴズ 伝説の歌声 5 ドイツ アリア集 /  (VARIOUS)
内容としてはアメリカのマーベル・コミック出身のヒーロー映画何本もの流れをくんでおり、ヒーロー大集合で破滅寸前の地球を救えるか?といったもの。『インクレディブル・ハルク』(2008)『アイアンマン』(2008)『アイアンマン2』(2010)『マイティ・ソー』(2011)『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』(2011)と続いてきて、ついに全員集合ということで今回の『アベンジャーズ』。ハルクとソーの映画はすでに観ていたのですが、今回『マイティ・ソー』からの連想か、北欧神話の「ラグナレク」を思い出しました。「神々の没落あるいは運命」と呼ばれ、世界が滅びる日のことで、19世紀ドイツの作曲家ワーグナー(1813ー1883)がオペラ『ニーベルングの指環』四部作の最後に当たる『神々の黄昏』でこの場面をオペラ化しています。

マイティ・ソーの「ソー THOR」は英語読みで、これは北欧神話の中では、無敵の武器であるハンマー(ミョルニルの槌、映画ではムジョルニアと言われていた)をもった雷神としておなじみの「トール」です。映画内にも出てきますが「ソーズデイ」として木曜日の語源となったとされており、他には火曜日:チュールの日、水曜日:オーディンの日、金曜日:フリッグの日ということで曜日名は四つまで北欧神話由来ということになります。ちなみに北欧神話を生んだゲルマン社会で最も神聖とされていたのは木曜日で、そういったこともあり、かつてはトールが主神だったとも考えられています。

映画でソーの父として登場する主神オーディンはトールと並んで北欧神話で大活躍する神で、ユグドラシル(宇宙をつらぬいてそびえる大木、古い詩には宇宙樹とも)の根元にあるミーミルの泉の水を飲むことで知恵と魔術を得る代償として片目を失ったとされています。ユグドラシルは上の本の表紙絵に描かれていますが、映画『アバター』(2009)に出てきた天まで届く超巨大な木を見たとき、イメージとしてはこういうものかなと思った覚えがあります。ユグドラシルは意味としては「オーディンの馬」となります。
オーディンは『ニーベルングの指環』ではヴォータンと呼ばれます。片目に眼帯をしたヴォータンはその中で、妻の女神フリッカを得る時に片目を犠牲にした、と歌っていますが、映画『マイティ・ソー』の中のオーディンは、かつての巨人族との戦いの時に傷つけられたようで、赤ん坊のロキを戦争中に拾うフラッシュバック・シーンで片目がえぐられていました(現在のシーンでは眼帯着用)。
このロキは神々に対抗する巨人族の出身で、後に神の一人として数えられたとのことで、北欧神話の中ではいたずら好きでしばしば神々に災難をもたらして不幸に陥れる存在として書かれています。美しい容姿だが邪悪な気質で二枚舌、と悪魔的な存在で、「ラグナレク」では神々に対抗して戦います。『アベンジャーズ』でも悪役として登場。ロキは『ニーベルングの指環』におけるローゲで、こちらでは半神で火をあやつるとされており、オペラ中にもその場面の印象的な音楽が登場します(Magic Fire Music、下にリンクあり)。

後日気になってアイアンマン・シリーズやキャプテン・アメリカもDVDで観ましたが、各作品に『アベンジャーズ』に続く伏線が仕込まれていました。今後も『アイアンマン3』『マイティ・ソー2』『キャプテン・アメリカ2』『アベンジャーズ2』ということで2015年まで続いていくようです。

参考文献
北欧神話と伝説』ヴィルヘルム・グレンベック=著、山室静=訳(講談社学術文庫
『北欧の神話 神々と巨人のたたかい』山室静=著(筑摩書房


Magic Fire Music
Wagner - Bryn Terfel Magic Fire Music (Die Walkure 2011) - YouTube
Josef Hofmann plays Wagner-Brassin Magic Fire Music from The Walkyrie (roll) - YouTube


関連ブログ
スカーレット・ヨハンソン『伝説の歌声』シリーズ完結 - じゃぽブログ
「北欧の宇宙観」の展示→日本標準時・明石市立天文科学館 - じゃぽブログ
ニーベルングの指輪』四部作の二作目に当たる『ヴァルキューレ』→土偶への祈り そして ヴァルキューレ - じゃぽブログ
CDシリーズ『伝説の歌声』のジャケット→モダン・デザインの父〜ウィリアム・モリス - じゃぽブログ

(J)