じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

教材づくり研究中

学校の音楽教育では、明治以来日本の伝統音楽を扱わないという時代が長く続きましたが、ここ十数年で日本の音楽を学ぶことに力がそそがれるようになってきているのは、ご存じの方も多いと思います。

これは中学1年生の教科書ですが、表紙からも、和楽器が前面に打ち出されているのがわかります。
中学校の音楽の授業では、平成10年に告示された指導要領で和楽器にふれることが初めて組み込まれ、学校で箏や三味線、和太鼓などが用いられるようになりました。教える先生のほうもずっと西洋音楽の教育を受けてきているので、和楽器の指導には戸惑いも大きかったようです。
現在では、箏などの楽器を自前で所有する学校や、地域で融通しあう仕組みが整ったところも増えて、在学中に一度は和楽器にふれる、という試みはほぼ達成されているようです。
和楽器の導入から10年が経って、平成20年3月に告示された新学習指導要領では、新たに「わが国の音楽文化の指導を重視する」ということが掲げられています。これは来年度、平成24年度から全面実施となるので、日本音楽に対する扱いがさらに大きな比重を占めることになると思われます。
日本の伝統音楽の良さを知ってほしい、興味を持つ人を広げたいというのは、私どもの財団の願いでもあります。学校教育への和楽器の導入が決まってから、和楽器講習を開いたり、実演家を派遣したり、楽器を購入して貸し出しをしたりと支援を続けてきました。
今回の新学習指導要領の実施にあたって当財団では、学校の現場で使いやすい音源教材を提案し作成することを研究中です。今日の日曜日は、学校教育の場をよく知る7人の先生にお出でいただいて、教材作成検討委員会を開きました。これで2回目ですが、皆さんとても熱心で、さらに現場の実情にも通じていますので、参考になるご意見をたくさんいただきました。
まずは楽器を体験するというところから始まった伝統音楽教育ですが、今回はさらに進んで「伝統音楽のよさを味わうことができるよう工夫する」というねらいが定められています。和楽器で簡単な曲が弾けるようになったとして、その先、伝統音楽のよさを知ってもらうためには、何が必要なのでしょうか?
また今回の改訂では、「我が国の伝統的歌唱教材をとりあげて学習すること」というのが加わりました。ふだん日本音楽に馴染みの薄い先生にとっては、ますます難しい課題のようです。
委員会の先生方のお話によれば、子供たちは大人が考える以上に本物に敏感に反応するとのこと。本物をわかりやすく、シンプルに聴かせることが音源教材のポイントになりそうです。
子供たちに「日本の伝統音楽を好きになろう」と語りかけたいのですが、そのためには、まずは学校の先生自身が、聴いてみたら面白かった、これで授業をしたい、と思えるような教材づくりが必要です。今日の委員会でもアイディアはいろいろ出てきましたが、まとめるまでにもうしばらく時間がかかりそうです。これまでにない、魅力的な日本音楽の教材を実現させたいと思っています。

(Y)