じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

地歌ドイツ公演終了


このブログでご紹介してきた地歌のドイツ公演ですが、昨日、コブレンツ市のクーネンパレス大ホールで大盛況の内に無事に終了いたしました。当財団の藤本理事長から写真とメッセージが届いたのでご紹介させていただきます。

昨日の公演は、開演間際にお客様がどんどん増えて、慌てて椅子を30脚出す盛況でした。
写真は「八重衣」と、終演後に東日本大震災復興のための募金箱を持ってご協力頂いたスナップです。
4回の公演で、800ユーロほどの募金を、ドイツの皆様から頂きました。
これから最後のパッキングをしてフランクフルトまで約2時間の鉄道移動ののち、帰国します。


募金箱を持つ藤井泰和(ひろかず)さん・昭子さんご兄妹。

昨今、むしろ外国の方のほうが日本の伝統文化の本質を鋭く捉え、研究し、発信されている例も増えてきています。それは日本国内に限った話ではなく、海外でも、日本の伝統音楽を聴くだけでなく実際に演奏するなど、「日本にしかないオリジナルな文化」に多くの関心が集まっています。

逆に日本人のほうが、海外のものばかりを追いかけることに慣れて、つまり、日本人が「日本」を知らない。前サッカー日本代表監督のイビチャ・オシムさんは「日本のサッカーを日本化する」と仰っていましたが、これもひとつの文化論に結びつく考え方・発想でしょう。

思えば、天平の時代の昔から(もっと以前か?)、日本は輸入文化大国といってよく、近代国家になってからは、もっぱら西欧文化の輸入一直線でここまで来たわけです。でも、そろそろ一度立ち止まって自分たちの足元を見直し、本当に良いものとは何か、先人が築き上げ継承してきた文化の中味と価値について、じっくり考えてみてよい時機にきたように思います。ともかく、長い歴史を通じてこの数十年から100年あまりの生活環境の変化ほど巨大で加速度的なものはなく、そこにはきちんと検討されることなく投げ捨てられ、置き去りにされてきたものが多くありそうだからです。

ドイツ地歌公演の成功の連絡を受け、こんなことをふと考えてしまいました。


当財団からは、今回のツアーに参加された日本を代表する邦楽演奏家の皆さんのCDを発売しております。もし、まだ地歌をお聴きになったことがない、その本物の凄さに接したことがない、という方であれば、どのアルバムもお薦めです。また、これらの演奏を聴くことで、今までの感じ方、考え方などを転換するきっかけとなるかもしれません。


藤井泰和の三弦(VZCG-303)

<収録作品>
雪(ゆき)
作詞:流石庵羽積/作曲:峰崎勾当
歌・三弦:藤井泰和

八重衣(やえごろも)
小倉百人一首」より/作曲:石川勾当
歌・三弦(本手):藤井久仁江 歌・三弦(替手):藤井泰和

萩の露(はぎのつゆ)
作詞:霞紅園/作曲:幾山勾当
歌・三弦:藤井泰和 歌・箏:藤井久仁江 尺八:青木鈴慕


地歌 藤井昭子[第7回ビクター伝統文化振興財団賞「奨励賞」](VZCF-1017)

<収録作品>
袖の露(そでのつゆ)
油屋茂作、市朝 作詞/峰崎勾当 作曲
唄・三弦:藤井昭子

娘道成寺(しんむすめどうじょうじ)
作詞者不詳/石川勾当 作曲
唄・三弦:藤井昭子 笛:福原徹彦

影法師(かげぼうし)
橘万丸 作詞/幾山検校、北村文 作曲
唄・三弦:藤井昭子

七小町(ななこまち)
船坂光枝(三枝) 作詞/光崎検校 作曲/八重崎検校 箏手付
唄・箏:藤井昭子 唄・三弦:藤井久仁江 尺八:青木鈴慕


琴古流尺八 徳丸十盟[ビクター邦楽技能者オーディション合格者](VZCG-176)

<収録作品>
鹿の遠音(しかのとおね)・鶴の巣籠(つるのすごもり)吹き合せ
尺八(琴古流):徳丸十盟 尺八(都山流):山本邦山

松風(まつかぜ)
作曲:初世 中能島松声
尺八:徳丸十盟 唄・箏:萩岡松韻、鈴木厚一 唄・三絃:山登松和

笹の露(ささのつゆ)
作曲:菊岡検校、八重崎検校
尺八:徳丸十盟 唄・箏:米川裕枝 唄・三絃:藤井泰和

巣鶴鈴慕(そうかくれいぼ)
尺八:徳丸十盟

(堀内)