じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番

探していたCDを一昨日中古で入手しましたので書いておきたいと思います。録音関係者の間でも音質で話題になる盤です。音にフォーカスするシリーズとしては、
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・・・に続いて第3回となります。

(入手したCDのジャケット)
CD番号:SONY SBK 46339
チャイコフスキー「ピアノ&ヴァイオリン協奏曲」

手に入れたのはアメリカ盤ですが、Essential ClassicsというシリーズのConcertosの一枚として、既発売のマテリアルからチャイコフスキー作品がカップリングされて再発売になったもののようです。オリジナルの盤はCBS / CBSソニー : 30DC714かも知れません。

後半のヴァイオリン協奏曲も良い演奏ですが(奇しくも1974年の今日、演奏者のダヴィッド・オイストラフが亡くなっています)、ここでは最初に登場する「ピアノ協奏曲第1番変ロ短調作品23」を取り上げます。1979年11月14日、ニューヨークリンカーン・センター、エイブリー・フィッシャー・ホールで行われた定期演奏会の実況録音です。ピアノ:エミール・ギレリス、ズービン・メータ指揮、ニューヨーク・フィルハーモニック
ご参考→リンカーンセンター「エイブリー・フィッシャー・ホール」とメトロポリタン・オペラハウス

演奏が良いことが音の良さにつながるという当然のことをいつも書いているのですが、技術に裏打ちされた素晴らしい熱演、迫力です。ライブ録音なので雑音や咳は普通に入っているのですが、ニューヨーク・フィルらしいパワー感溢れるアメリカンな音の前ではそんなに気になりません。数年前にここで同フィルのブルックナー9番を聴いたのですが、第2楽章では戦車が突進してきたのかとびびったほどでした(笑)。

そして70年代終わりのデジタル録音がその熱気をよ〜く捉えています。エイブリー・フィッシャー・ホールの響きがしていますね。そうです、CDの盤面そしてジャケットの裏側にDDDと書いてありますとおり、この演奏はデジタル録音のようです。1楽章の終わりあたりを聴いていると若干デジタル録音ぽさを感じるのですが、全体を通していやなデジタル感というものはほとんどありません。

70年代のデジタル録音というと、マリア・ジョアン・ピリスが東京イイノ・ホールで1974年に行った「モーツァルト:ピアノ・ソナタ全集」(CD五枚組 COCQ 84115〜9)を思い浮かべます。これは一言で言って良い演奏良い録音なのですが、なぜかつるっとした感触があって、それが不思議でした・・・凹凸はあるのですが一番先端の鋭い部分がヤスリで削られて丸くなったような感じの音なのです。後からデジタル録音ということに気付いて納得したものでした。五年の間にも日進月歩のデジタル録音技術…

ピリスはシューマンのピアノ協奏曲も1997年に録音していますね。そのうちこの曲についてもいろいろと検証してみたいと思っています。

(J)