じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

「新八犬伝」の音楽は

2月の日曜日の午後、NHKアーカイブスで「新八犬伝」が取りあげられていました。昭和48(1973)年4月から昭和50(1975)年3月まで平日の夕方放送されていたNHKの人形劇「新八犬伝」です。当時はそれほど熱心に見ていたわけではなかったのですが、なつかしくて、途中から見はじめました。
全部で464回放送されたうち、NHKにはわずかに4回分しかテープが残っていないのだそうです。当時はビデオテープが貴重で、放送が終わると重ね撮りをしたため、記録がほとんど残っていないとのこと。ところが、その貴重な最終回を放映中に緊急地震速報が入り、あと少しというところで中断されてしまいました。そのため2月28日の深夜に再放送があり、思いがけず全部録画して見ることができました。
「新八犬伝」といえば辻村ジュサブローさんのちょっとおどろおどろしい人形やあざやかな衣裳のことがつよく印象に残っていたのですが、35年以上経って見てみると、いろいろなことに気づきました。
じつは語りが坂本九さんだったことも忘れていたのですが、あらためてその名調子におどろきました。番組には、小学生の頃「新八犬伝」の大ファンだったという林家正蔵さんがゲスト出演していて、やはり語りが素晴らしい!と感想をもらしていました。「落語の地噺(じばなし 説明語り)の手法と、講談のたたみかけるような語りのリズムのよさの両方を持ち合わせている」ことに加え、「古典芸能がベースでありながら、モダンで明るくて楽しい」とコメントしていました。これだけ語れる方はいない、というのにもうなずきました。
坂本九さんのセンスのよさもあるでしょうが、昭和の時代には、まだ古典芸能の語りのテイストを身近に感じられる機会があったに違いありません。
音楽が藤井凡大(ぼんだい)さんだということにも初めて気がつきました(もっとも、当時は藤井凡大さんの名前を知るはずもないのですが)。藤井凡大さんは1994年に63歳で亡くなられましたが、現代邦楽に数々の作品を提供しています。和楽器の合奏曲などを数多く作曲し、長くNHK邦楽技能者育成会の講師を務めました。一方で、合唱やオーケストラの作品も多数あります。
「新八犬伝」のテーマソングには覚えがありました。そして聞こえてくる太棹の響きも調子よく・・・。この演奏はどなただったのでしょう? ご存じの方がいらしたら教えてほしいものです。
坂本九さんが歌う挿入歌「夕やけの空」や「仁・義・礼・智・忠・信・孝・俤」(「いざとなったら珠を出せ」の歌詞)の作曲も藤井凡大さんだったんですね。
和楽器の魅力がたっぷりの「新八犬伝」の音楽を聴いて育った昭和の子供にも、日本の音楽の楽しさが刷り込まれたのではないでしょうか?
今も演奏家に人気のある藤井凡大さんの代表的な作品が含まれるCD、DVDを紹介しましょう。どこかに聴いたことのあるフレーズが見つかるかもしれません。
「二つの個性」 じゃぽ音っと作品情報:邦楽演奏家 BEST TAKE 砂崎知子 /  砂崎知子

「三弦、箏、十七弦による 四重奏曲」 じゃぽ音っと作品情報:箏・桐韻会 /  桐韻会

「四重華一番」「箏と十七弦による 須唄流三章」 じゃぽ音っと作品情報:箏・三弦 古典/現代名曲集(二十二) /  中島靖子、正派邦楽会

和楽器管弦楽協奏のための一楽章」 じゃぽ音っと作品情報:第十三回日本伝統文化振興財団賞 遠藤千晶(生田流箏曲) [日本伝統文化振興財団賞受賞制作DVD] /  遠藤千晶

(Y)