じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

黒森神楽と「囃す」

6月 23日(土)、国立劇場小劇場で「東日本大震災復興支援 東北の芸能1 岩手」というタイトルで2公演がありました。

1時開演のほうは、釜石の「鵜住居虎舞(うのすまいとらまい)」、大船渡の「板用肩怒剣舞(いたようかたいかりけんばい)」、遠野の「青笹しし踊り(とおのあおざさししおどり)」、宮古の「黒森神楽(くろもりかぐら)」からシットギ獅子が出演。4時開演のほうは国指定重要無形民俗文化財の「黒森神楽」から7演目が演じられました。
昼のほうは早々にチケットが売り切れて取ることができず、4時からの「黒森神楽」を観てきました。開演前の舞台の写真です。

黒森神楽は岩手県宮古市にある黒森神社に属しますが、古くからここを拠点に、北は八戸藩、南は伊達藩との国境まで、広い範囲を巡って各地の神楽宿で披露してきたそうです。舞台はその神楽宿になった家の座敷という設定のようで、黒森神社の神霊の顕れとしての獅子頭を権現様として奉っています。

座敷にこのような幕を張り、演者はその後ろから出てきます。黒森神楽の演目は多数あって、その中から組み合わせて一晩の演目となるそうです。
この日は神楽衆が楽器を打ち鳴らして神を招く「打ち鳴らし」のあと、「清祓い(きよはらい)」「榊葉(さかきば)」「松迎(まつむかえ)」「山の神舞(やまのかみまい)」「恵比寿舞(えびすまい)」「節分(せつぶん)」と神楽舞が続きました。
プログラムの解説に「太鼓が神楽のすべてをリードする」とありましたが、その言葉のとおり、太鼓は拍子やテンポををとるだけでなく技巧的に見せたり聴かせたりするところもあり、文字通り鼓舞していました。打楽器は両手に持った鉦を打つ人が3名。そして、笛もメロディが面白く、変化にとんでいて大活躍でした。
神楽の舞手もそれぞれに熱演ですばらしかったのですが、それをリードしているのが太鼓と笛で、この楽器で「囃す」ことで、訪ねた家の座敷を神楽の世界にしているのではないかと思ったほどです。

来月、当財団主催の東京[無形文化]祭が開かれますが、そのなかにも「囃す」という公演があります。演じ手を支え、歌や所作から持ち味を引き出す日本伝統音楽の囃子の諸相を、第一人者たちが演奏するというものです。
出演は江戸里神楽の若山胤雄社中による「祭囃子」。民謡囃子の名人、美鵬駒三朗社中による「民謡囃子」。ジャンルを超えた活動を続ける葛野流大鼓方亀井広忠を中心とした「能楽囃子」。歌舞伎音楽の枠を拡大し続ける俊英、藤舎呂英率いる[ R o e i -√x T o ]による「邦楽囃子」。
魂を鼓舞する「囃子」を、日本の伝統芸能の様々なジャンルから取り上げる囃子の競演。心躍る体験ができるのではないかと楽しみです。
2012年7月23日(月)、紀尾井ホールで19:00開演。http://mukeibunka.com/stage/stage6/

(Y)