じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

日本音楽集団の50年

いまから50年前、1964年(昭和39年)というと何を思い浮かべるでしょうか? 東京オリンピックが開催された年として、このところ注目されることが多くなりました。東海道新幹線の開通、東京モノレールの開通などもこの年ですね。日本中にさまざまな新しい動きが芽生えた時代といってもいいでしょう。
日本音楽集団が生まれたのもこの年です。現代邦楽の演奏集団「日本音楽集団」のサイトのプロフィールには、「1964年日本の音楽界に新たな動きがありました。それまでの伝統的な邦楽の一線を越え、現代のスピード感、力強さをバネにし、誰にでも親しめる新しい邦楽のあり方を求めた一群が誕生したのです」とあります。

今年度から「創立50周年記念コンサートシリーズ」が始まりますが、その前ぶれとなる会に行ってきました。「日本音楽集団 第211回定期演奏会 時代をつむぐ・・・未来をつなぐ」と題する演奏会です(2014年3月15日(土)津田ホール)。内容について、プログラムから引用してご紹介します。

1964年、作曲家や邦楽器奏者ら14人が集まり結成した日本音楽集団は今年で50周年を迎えます。これまで1000曲を優に超える作品を生み出してきました。当定期演奏会では、50周年を前にこの珠玉の作品群を振り返り、あらためて再演したい、そしてこれからも演奏し続けていきたい曲を年代ごとにおって演奏させていただきます。そして当団の未来へつなげる一歩として、秋岸寛久の新曲もご用意いたしました。
時代とともに邦楽アンサンブルの糸をつむいできた当団は、これからの未来に、本日また一歩、歩みを進めたいと存じます。

数ある日本音楽集団のレパートリーから選ばれた、各年代を代表する5曲は演奏に迫力があり、それぞれの時代のエネルギーのようなものが感じられました。

「時代をつむぐ・・・未来をつなぐ」 プログラム

60年代・・・
ソネット 三木稔作曲(1962年)
 尺八三重奏

70年代・・・
「颯踏(さっとう)」 長澤勝俊作曲(1975年)
 笛(篠笛、能管)、打楽器

80年代・・・
「青のモチーフによるコンポジション 佐藤敏直作曲(1984年)
 笛、尺八、三味線、琵琶、箏、十七弦、打楽器

90年代・・・
シンフォニエッタ・ルラーレ」 上野耕路作曲(1992年)
 笛、尺八、三味線、琵琶、箏、十七弦、打楽器

・・・未来へ
「眩耀泡幻(げんようほうげん)」 秋岸寛久作曲(2014年)委嘱新作
 笛、尺八、三味線、琵琶、箏、十七弦、打楽器

曲の合間に、創設当時を知る代表の田村拓男さんと尺八の宮田耕八朗さんのお話がありました。この日「ソネット」を演奏した宮田さんは、日本音楽集団結成のきっかけともなった「東京尺八三重奏団」(メンバーは村岡実、横山勝也、宮田耕八朗。前身は「モダン尺八トリオ」)が初演したときから同じパートを吹いているとのこと。50年間一緒に活動してきたお二人のお話は興味がつきません。2月に三鷹で開かれた「第2回全国邦楽合奏フェスティバル」の盛況ぶりにもふれて、今日、全国で流派や楽器の垣根を越えた邦楽の合奏がさかんになったのは隔世の感があるということでした。
また、未来への新作「眩耀泡幻」を発表した日本音楽集団所属の作曲家、秋岸寛久さんのお話もありました。秋岸さんは中学生のときに日本音楽集団の「颯踏」を聴いているそうです。その後、作曲を学んでいた東京音楽大学で箏の野坂恵子(現・操壽)さんや作曲の三木稔さんと出会い、日本音楽集団と関わることになったいきさつなど、まさに出会うべくして出会ったと思われる、こちらもたいへん興味深い内容でした。

日本音楽集団の「創立50周年記念定期演奏会シリーズ」は、まず2014年7月9日(水)、津田ホールで「邦楽オーケストラの誕生」が開かれます。1960年代の名作をあらためてとりあげる試み、新鮮な響きとなって聞こえるのでしょうか? 期待の演奏会です。

(Y)