じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

壬生狂言を初鑑賞


重要無形民俗文化財である壬生狂言は正しくは「壬生大念佛狂言」と言って、京都では700年以上の昔から一般の人々に親しまれてきたそうです。鎌倉時代、円覚上人(えんがくしょうにん、1223-1311)の説教を聴きに壬生寺に訪れる人々が増えに増え、拡声器などが無いこの時代どうやって念佛の教えを届けるかと考えて、パントマイムを思いついたのだそうです。
*下写真:壬生寺新撰組関連でも有名。すぐ近くに屯所跡が

そうして始まった壬生寺壬生狂言、娯楽としても発展し、その後レパートリーを増やして現在では30演目が上演されます。確かに見ていて比較的わかりやすいですし、視覚的エンタテインメント性も高く、長きにわたって親しまれてきたということに納得がいきました。

一年のうちには、春の公開「壬生大念佛会」、臨時的に行われていた秋の公開、演目『節分』を繰り返し上演する節分の公開、があります。

2015年春の大念佛会、最終日の5月5日に拝見しました。この日は特別で、通常の午後1時〜5時30分の昼の部に加え、午後6時から10時の夜の部もありました。そして一年のうち、この夜の部でしか観ることができない演目もあるのです。最後から2番目の『湯立』がそれです。最後の『棒振り』も元々はこの日しか観ることができなかったのですが、曲芸的な要素を含み後継者の育成に時間を要するため、最近は秋の公開でも毎日最終演目として上演されています。もちろん有名な『炮烙割』は5月5日も最初に登場しました。
炮烙割り
これを最前列間近で観たいなら、開演の1時間以上前から並ぶ必要があるでしょう。その次の演目が終わったあたりで帰られるかた(再入場は不可)も多少いらして、以後は気持ちの良い風が客席を通るなか、ゆったりと観ることができました。しかし半野外ですから夜の部では気温も下がり、上着を持っていて良かったと思ったものでした。

壬生狂言は全員がいわゆるプロではなくて、会社員や自営業などの本職を持った男性たちが演じるというのがまた素敵だと思いました。下は小学生から上は70歳台のかたまで、主に地元在住の約35名がメンバーとのこと。(「衣裳方」と呼ばれる衣裳の着付担当者は女性だそうです。)

年に三回ある壬生狂言の定例公開、次は秋の特別公開で、2015年10月10日(土)〜12日(月・祭)です。鑑賞料は大人800円とだいぶ安いうえにこれは全額維持伝承のための費用に使われますから、是非一度ご覧になってみてはいかがでしょうか。

現地で販売している「ハンディ鑑賞ガイド 壬生狂言壬生寺・編(淡交社)は、写真も豊富で各演目についてとてもわかりやすく解説してある本です。税抜1300円。本稿でも参考にさせていただきました。

◎参考URL(音が出るサイトです)
重要無形民俗文化財

(J)