じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

中学校の音楽室で(アウトリーチとは)

先日、中学校での邦楽のアウトリーチを参観してきました。

アウトリーチとは、「知恵蔵2012」の解説によれば「公的機関、公共的文化施設などが行う、地域への出張サービス。例えば公共ホールがプロのアーティストを地域の学校や福祉施設に派遣してワークショップ、ミニコンサートなどを行う普及活動。英語名詞のアウトリーチは、手を伸ばすことを意味する」とのこと。
さらに、「ホールで客を待つよりも、アーティストが市民の生活の場に積極的に入り込むことによって、芸術に関心のある層を飛躍的に増やそうという活動。子供たちを対象にしたアウトリーチ活動は、未来の観客(聴衆)を育てることにもつながる」とあります。ちなみにワークショップ (workshop) は「体験型講座」という意味で使われています。
この日は、邦楽地域活性化事業の一環で、山田流箏曲演奏家、朝香麻美子さん、佐々木千香能さん、小間由起子さんの3人が千葉市内の中学校の音楽室に出かけて、2年生のクラスを対象にミニコンサートを開きました。

ほとんどの生徒は邦楽になじみがないので、楽器の説明をしたり、歌詞の解説をしたり、というミニレクチャー付きです。邦楽が学校でとりあげられるようになってから、演奏家が学校に出かけて音楽の授業をする例がよくみられますが、今回は授業ではなく、あくまでミニコンサート。レクチャーというよりMCの延長といったほうがいいかもしれません。
メインでとりあげたのが古典の曲なので、歌詞にかくされた言葉をみつけたり、歌の一節を一緒に歌ってみたりと、生徒が参加する場面も作って、曲に親しみをもってもらいました。

一クラス26名に向けた、私たちからするとたいへんぜいたくなミニコンサートですが、間近で演奏家の呼吸まで感じとれるのがよかったのでしょう、演奏が始まると、みんな静かに耳を傾けていました。
授業の後、ある先生が「いつもはやんちゃな学年なのに、集中して聴いていてびっくりした」と言っていました。音楽の先生は、邦楽の発声による歌がすばらしかったと感激していました。また、女子はあまり反応がないように見えたかもしれないけれど、とても楽しみにしていたので、感じるところがあったはず、とも言ってくれました。
このプロジェクトでは、事前に合宿までしてきちんと内容を練り上げてからアウトリーチを展開しています。生徒が興味を持てるように十分工夫をしたうえで、演奏家がじかに話しかけ、本物のよい演奏を聴かせれば、初めての邦楽でも飽きずに聴いてくれるということを確信しました。
さらに2つの演奏家チームが同様のミニコンサートを用意していて、他の学校でもアウトリーチが予定されています。邦楽を聴くという体験を、たくさんの子どもたちに届けられることを願っています。

(Y)