じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

啓蟄の候

しばらくお休みしていた本ブログですが、土の中で冬ごもりをしていた虫たちに倣って、本日より再び動き出します。

この一年力を注いできたのが伝統音楽ジャンルの音楽配信です。

当財団ではこれまでに約1,000タイトルのCDを発行してきましたが、その中から権利的に配信可能な音源をピックアップして、昨年4月より順次リリース中です。現在、箏曲地歌、尺八、胡弓、琵琶、邦楽囃子、小唄、端唄、雅楽、声明、民謡、舞踊歌謡、沖縄・奄美の音楽、創作邦楽・現代邦楽、大正琴、クロスオーバーといったジャンルの161タイトル(2/18現在)を配信中で、今後も新作を含めリリースを続けていきます。

レーベルとして音楽配信を開始すると、配信事業者から毎月実績レポートが送られてきます。そこにはどの曲が何回聴かれたかのデータが付されているのですが、これがとても興味深く見ていて飽きません。伝統音楽のジャンルはポップスと違ってヒットチャートのようなものがありませんから、今どのような音楽が支持されているかを知る貴重な手がかりになります。

そこで、本日は「ここ数ヶ月最も聴かれている曲」をご紹介したいと思います。ただし、伝統音楽と言っても、あくまでも当財団がこれまでに配信リリースした音源が対象であることと、そうは言っても再生回数の絶対数はまだまだ小さいことをお含みください。

昨年9月から12月までの間にストリーミング全般でよく聴かれた曲ベスト5は以下の通りです。

 

「紅葉の橋」(栄芝「芝で生まれて/栄芝の端唄」より)

「生命の海」(土取利行「瞑響・壁画洞窟—旧石器時代のクロマニョン・サウンズ」より)

「二十四季風雅頌 かんざし」(夢玄「伝説の誕生」より)

「二つの個性」(正派邦楽会「箏・三弦 現代名曲集(二十三)」より)

「ロンドンの夜の雨」(安藤政輝「宮城道雄を弾く2 箏独奏曲全集」より)

 

また、YouTubeでは

「新さんさ時雨」「宮城長持唄」(おもだか秋子「民謡(うた)の道」より)

「都踊」(安藤政輝「宮城道雄を弾く 7 春を謳う」より)

「せかれ」(春日とよ栄芝「舞踊小唄春夏秋冬」より)

がもっとも多く再生されました。

 

箏曲と民謡が多く聴かれているのはお稽古で何度も聴くという方がいらっしゃるからでしょうか。邦楽創作集団〈夢玄〉による「かんざし」と栄芝の端唄「紅葉の橋」はいずれも舞踊の方々に人気があるようです。「生命の海」はフランスの洞窟で鍾乳石や石筍を叩いて出る音を録音したもので国を問わず聴かれています。

 

音楽配信はメディアの変遷に対応するために必要なことですが、世界の隅々にまで音楽を届けられる利点を生かして、日本の伝統音楽を開かれた文化にしていく契機になればと願いながら、配信準備に向き合う日々です。

(茶目子)

 

※本文中のリンク先は、配信タイトルの紹介のためすべてダウンロード専用の当財団直営ストア〈じゃぽオンラインストア〉になっています。ストリーミング再生でお聴きになる場合はApple, Amazon, Spotify, LINE, AWA, YouTubeレコチョクなどの有料もしくは無料・広告付きサービスから「検索」をしてご利用ください。

頌 春 「伝統を未来に…」

 日本伝統文化振興財団は、一九九三年ビクターエンタテインメント社を基金元として設立され、爾来伝統音楽・芸能に関するCD・DVDの公刊、SPレコード音源のアーカイブ化と「歴史的音源(国立国会図書館)」での公開、主催公演、顕彰や演奏会支援による実演家育成、三味線貸出による邦楽教育支援、国際交流などの活動に取り組み、今年三十周年の節目を迎えます。これもひとえに各界関係者の皆さまの多大なるご支援、ご助力の賜物と心より厚く御礼申し上げます。
 この間、われわれを取り巻く環境はネットとデジタルの時代の到来やコロナ禍の影響などにより大きく変化しました。こうした中、昨年には伝統音楽ジャンルに特化した音楽配信事業を立ち上げました。一月一日現在、百四十一タイトルのCD音源を配信中で、今後毎月タイトル数を増やしていく計画です。
 本年もスタッフ一同初心を忘れることなく、「伝統を未来に」を合言葉に、新しい時代にふさわしい伝統文化・音楽文化の振興に取り組む所存です。
 皆さまには、変わらぬご支援ご協力を賜りますよう、謹んでお願い申し上げます。

   令和五年元旦


公益財団法人日本伝統文化振興財団
理事長 市橋 雄二

「伝統を未来に・・・」2022

頌春

 

 日本伝統文化振興財団は平成五年の発足以来、日本の伝統文化の振興と発展に向けた公益事業に取り組んでまいりました。引き続き無形文化の記録・保存・公刊、公演支援、国際交流、教育支援など日本の伝統文化を支える事業を推進していく所存です。
 近年の音楽聴取メディアの変化はコロナ禍によってさらに拍車がかかり、ネットを利用した音楽配信にとどまらず世界に向けたライブ映像配信なども広がりつつあります。弊財団と致しましては伝統の未来への継承を確かなものとするため、従来の事業に加えて新たに録音・録画物の配信事業に取り組んで参ります。
 皆さまには、変わらぬご支援ご協力を賜りますよう、謹んでお願い申し上げます。

 

   令和四年元旦

 

公益財団法人日本伝統文化振興財団
理事長 市橋 雄二

「地歌のいろは~九州系地歌と上方地歌の競演~」令和3年度(第76回)文化庁芸術祭(レコード部門)大賞受賞!

このたび日本伝統文化振興財団制作の「地歌のいろは~九州系地歌と上方地歌の競演~」(藤本昭子、菊央雄司ほか)(2021年3月24日発売)が、令和3年度(第76回)文化庁芸術祭レコード部門の大賞を受賞しました。

 

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本作品は、地歌箏曲家藤本昭子が主催した地歌公演「地歌のいろは」(2020年12月12日紀尾井小ホール)に寄せられた大きな反響を踏まえ、公演の全曲目を同じ演奏者で改めてスタジオ録音したCDアルバムです。公演時の音と映像記録が万全に残されていたにも拘らず、再度のチャレンジとなるスタジオ録音を自ら主催した藤本昭子の狙いは、九州系地歌と上方地歌の微細な表現の差異とそれぞれの味わいを、このまたとない機会を捉えて余すところなく記録に残すことにありました。ここに、古典地歌の継承に懸ける藤本昭子自身の強い願いが込められています。さらに今回のスタジオ録音では、独演だった公演時の舞台演奏とは異なり、上方地歌の技芸の真髄に迫る、一人二役の多重録音で「浪花十二月」が収録されました。

現代の地歌の主流となっている九州系と地歌の本家本元である上方の伝承や味わいの違いに着目した公演開催や音声記録は、これまでなかったと言って過言ではありません。古典地歌の継承者としての視点から藤本昭子が立案した手法は次の通りでした。

1曲ずつ通して九州系と上方を聴き比べる「黒髪」、九州系と上方で1曲を交互に演奏し、双方の歌と三弦を聴き比べる「雪」、上方地歌ならではの「浪花十二月」、九州系地歌ならではの三弦本手・替手合奏による「難波獅子」、そして出演者5人が5様の演奏形態を取る「松竹梅」。この多彩なバリエーションは、実力で三曲界の第一線を牽引する助演者のサポートがあって、初めて可能となったことは言うまでもありません。さらに本作品は演奏楽器にも拘り、九州系地歌の芸祖長谷幸輝検校遺愛の明治期の東京の三弦、その写しとして熊本で作られた大正期の三弦、上方地歌に伝えられる大正期の野川三味線が曲目ごとに選ばれ使用されました。

日本の伝統芸能は、それぞれのジャンルに優れた芸系や特徴ある流派がいくつも生み出されています。京阪の地で生まれた地歌もその例に漏れず、本来の味わいを今に伝える菊筋、富筋の芸系や、現在の地歌三弦とは楽器形態が異なる柳川三味線、野川三味線が途絶えず継承されています。

日本の古典芸能の多彩で豊かな広がりと繊細な味わいの一端を、異なる芸系の微細な差異に着目して企画収録された本作品を通じてお聴き取り頂きたいと願っています。

 

【受賞理由】

多彩な演奏形態とそれぞれに適した選曲によって九州系地歌と上方地歌の差異を検証しつつ、両者の魅力を存分に示すことに成功している。演奏会での録音ではなく、スタジオで録音し直すことによって精度が高まり、この意欲的な企画趣旨をより明確にすることで、記録・研究・そして鑑賞においても完成度の高いものとなった。

 

藤本昭子さんは日本伝統文化振興財団賞第7回の受賞者です。令和2年度(第75回)文化庁芸術祭(レコード部門)では、「雪墨 YUKISUMI/藤本昭子 佐藤允彦」で大賞を受賞。2年連続の大賞受賞となりました。

20年前からスタートした「地歌ライブ」は、去る2021年11月28日に第100回公演をもって終了し、また新たな一歩を踏み出されたばかりの藤本昭子さん。2022年1月22日(土)には、国立劇場小劇場にて「藤本昭子の会」第1回演奏会が開催されます。

 

子どもたち集まれ!放課後は「芸能花伝舎」で“クラブ活動”しよう!

西新宿にある芸能文化の拠点「芸能花伝舎」で、楽しみながら伝統文化の素養を身につけませんか?プロの実演家が親身に指導します。子どもたちの未来につながる、ホンモノの教養を!

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令和3年10月5日より、日本舞踊、三味線、落語も体験できる伝統文化総合コースがスタート。【芸能花伝舎クラブ】第一期生募集中!小学4年~中学1年生対象です。

 

芸術の専門家が集う特別な空間で知識や技術を学ぶだけでなく、プロの実演家やそこで出会う友人との交流による学校生活とは異なる経験が、子どもたちの豊かな感性を育みます。

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募集期間 : 2021年9月26日(日)まで

対  象 : 小学4年生~中学1年生

開校日程 : 2021年10月5日(火)~ 2022年3月1日(火)予定 

       (火曜日16:20~17:20まで)

場  所 : 芸能花伝舎

費  用 : 25,000円

 

新型コロナウイルス感染拡大防止のため、専門家の指導下に「感染経路の遮断」に努め、細心の注意を払って安全・安心に実施するよう心がけます。

 

詳細はコチラから➾https://www.geidankyo.or.jp/12kaden/experience/detail/7907

 

【芸能花伝舎クラブに関するお問い合わせ】

芸団協・実演芸術振興部内 「芸能花伝舎クラブ」係

〒160-8374 東京都新宿区西新宿6-12-30 芸能花伝舎2F

TEL:03-5909-3060(平日11時~16時)

第25回日本伝統文化振興財団賞と第10回中島勝祐創作賞

第25回日本伝統文化振興財団賞と第10回中島勝祐創作賞について、改めてご報告いたします。

 

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第25回日本伝統文化振興財団賞の受賞者は池間北斗(いけま ほくと)さん。沖縄在住の琉球箏曲演奏家です。贈賞理由は次のとおり。

[贈賞理由]

琉球器楽の琉球箏・胡弓・笛・太鼓は専ら歌三線の伴奏楽器として機能してきた。琉球箏は本土の八橋検校の芸脈が琉球士族によって王府にもたらされ、独自の成長をみせて古典十曲を今日に伝えるも、箏曲の独奏楽器としての飛躍と発展は未だしの感がのこる。池間北斗は胡弓の森田夏子・笛の入嵩西諭と相図り「琉球器楽の会」(平成31年2月、那覇・パレット市民劇場)を企画、琉球箏の独奏楽器としての機能を探り、その可能性・未来性を追及して、高水準の成果をよく示した。現代琉楽に新生面を開拓する真摯な姿勢と情熱は高く評価され、また期待するところ大である。

 

詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。

jtcf.jp

 

当財団のもう一つの顕彰事業である中島勝祐創作賞の第10回は、地歌箏曲演奏家、菊重精峰さんの作品「一杯(いっぱい)」に贈られました。地歌作物(さくもの)風の楽しい曲です。

作品の詳細と菊重さんのプロフィールはこちらをご覧ください。

jtcf.jp

 

例年、6月頃に両賞の贈呈式を行い、そこで受賞者の技芸や作品をご披露いただいておりましたが、昨年に続き今年もコロナ禍により贈呈式を開催することが叶いません。本当に残念です。

それぞれ、受賞者の映像、受賞作品の録音によってご紹介するべく準備をしております。どうぞ楽しみにお待ちください。

(Y)

「古典芸能の精髄~日本舞踊」配信のお知らせ

「古典芸能の精髄~日本舞踊」(主催:文化庁、主催・制作:公益財団法人日本伝統文化振興財団)は、以下の3つの動画配信プラットフォームで2021年2月20日(土)朝8時から配信を開始します。

長唄「雨の四季」と清元「子守」の2演目が視聴できます。

 

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動画配信プラットフォーム

360channel https://www.360ch.tv

観劇三昧 https://v2.kan-geki.com

U-NEXT https://video.unext.jp

 

視聴料金:2,200円(税込)

配信期間:2021年2月20日(土)午前8時~4月19日(月)23時59分

 ご希望の配信プラットフォームから、それぞれのご利用方法に沿ってチケットを購入してご視聴ください。

 

出演者などの詳細は、じゃぽブログのこちらの記事をご覧ください。

japojp.hateblo.jp

 (Y)