じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

CD「箏・三弦 古典/現代名曲集 (22)」の「八橋」

本日は、5月25日に発売になった「箏・三弦 古典/現代名曲集(22)」をご紹介します。
本CDは、正派邦楽会の准師範試験の課題曲集として毎年リリースしておりますが、試験課題曲の他にも、さまざまな曲を収録しております。
本年は、「八橋」「三弦独奏による 鳴沙」「潮音」「荒城の月変奏曲」「花の露草」「早春」「四重華一番」「箏と十七弦による 須唄流三章」です。

1曲目の「八橋」(やつはし)は、八橋検校の偉業を讃えた内容の岩井藍水の歌詞に、萩原正吟(1900〜1977)が作曲した曲です。八橋検校といえば・・・、箏曲「六段」の作曲者。最近弊財団でリリースした「箏曲『六段』とグレゴリオ聖歌クレド』」が話題沸騰中です。

このCDでは、「六段」誕生の背景に見え隠れする「グレゴリオ聖歌」の存在を、新たな視点で検証しています。双方の区切りの一致、要所の終始や音の合致。キリスト教禁止令を受け、元の歌の意味を隠す必要があったために、箏曲としては珍しい歌のない「器楽曲」として継承されたのでは・・という推測。「六段」という曲が現在に、ここまで普及し伝えられている理由、初歩に習う曲としては少し難しいけれど、頑張って弾ききってみたくなる曲が持つ力、各段52拍子の不思議・・思わず考えてしまいます。

と話は脱線してしまいましたが、この「八橋」、曲中に「六段」の初段が、やんわりと溶け込んで(?)演奏されている部分があります。
「ある曲に違う曲を合わせて演奏する」というスタイルは、しばしば見受けられます。弊財団から出ているDVD「岩手の秘謡 御祝い(ごいわい)」でご紹介しているのは、岩手遠野市に伝承されている「御祝い」という演奏です。

孫の誕生、または新居のお祝いに、男性グループと女性グループが左右に分かれてならび、男性は「謡」をうたい、女性は途中から「謡」に重ねて「民謡」を歌いだします。歌詞も旋律も異なる音楽が同時に響き、終わりは一緒になります!
徳丸吉彦先生の解説によると、個々に存在していた音楽を二つ以上組み合わせる演奏を「同時的な並置」と呼ぶそうです。「仏教の声明を歌うときに、雅楽の演奏をする」などの例があり、また近世邦楽でもこのような演奏法を「打ち合わせ」と呼び、地歌「すり鉢」「れん木」「せっかい」では、この3曲で打ち合わせができます。この曲も、同DVDの中に収録されています。

と脱線したままですね、、、ちなみに京都を代表する和菓子「八橋」は、八橋検校を偲んで、お箏の形を模したことに由来する説があるそうです。と少し戻って・・。
「箏・三弦 古典/現代名曲集(22)」を全曲ご紹介するつもりでしたが、1曲しかご紹介できませんでしたので、続きはまた次回でご紹介します。でもシリーズでお伝えしている「テノール歌手 木下保先生」の続きも、次回に書きます、といったような気もします・・・。どちらかで、お目にかかります!

(制作担当:うなぎ)