じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

秋の深川散歩(1) 芭蕉ゆかりの深川

晩秋の一日、友人たちと東京の下町、江東区の深川を散策しました。
深川観光協会のホームページによると、「深川は、昔大部分の海と散在する浮島や小島が多かったが、江戸慶長年間に深川八郎右衛門が現在の森下町に本拠をおいて、深川村の開発を始め、小名木川、源森川の整備などが進められ、寺院の移転建立、一般庶民の移住により江戸文化の花を咲かせました」ということ。江戸時代は町人文化が華やかに栄えたエリアでした。
深川といってもけっこう広いのですが、この日は地下鉄「森下」駅が出発点。松尾芭蕉が庵を結んだのが深川だったということから、そのゆかりの地を中心に歩きました。
ルートは次のとおりです。
地下鉄「森下」駅 → 深川神明宮 → 江東区芭蕉記念館 → 隅田川テラス → 芭蕉庵史跡展望庭園 → 芭蕉稲荷神社 → 萬年橋 → 深川稲荷神社 → 清澄庭園 → 地下鉄「清澄白河」駅
まず、深川の名の由来になった深川氏をまつった深川神明宮にお詣り。

イチョウが色づくまではあと少し。境内には十二の町みこしを納めた御輿庫が並んでいました。
ここから少し歩くと江東区芭蕉記念館。大きな葉っぱの芭蕉が植えられています。見た目どおりバナナの仲間だそうで、木ではなく多年草だとか。

館でもらった「芭蕉年譜」によると、延宝8(1980)年に深川の草庵に移り住み、翌年の春、門人から芭蕉の株を贈られて植えたことから「芭蕉庵」と名付けられ、これが俳号の由来ともなったそうです。芭蕉は伊賀の国、上野の生まれですが(そのため、忍者だったのではないかとの説も!)、芭蕉という名前の誕生は深川だったんですね。

館内にはさまざまな資料が展示されているほか、庭には芭蕉の句に詠まれた植物の数々が植えられていて、小さいながらも充実した記念館です。
記念館の庭の奥にある裏木戸から、隅田川の河畔に出られます。

整備された隅田川テラスを歩くと、カモメが飛んでいて、かすかに海の匂いがします。河水が岸のぎりぎりまでたっぷりあって、ちょっと驚きました。ところどころに句碑もあります。

隅田川をのぞむ芭蕉庵史跡展望庭園まで河畔を歩き、芭蕉稲荷神社へ。
狭い境内に蛙の置物がたくさんあります。芭蕉庵は、幕末・明治の頃には場所もわからなくなっていたのですが、大正6(1917)年の津波のときに、芭蕉が愛好したといわれる石像の蛙がこの辺りから発見されたので、庵の跡であるとして芭蕉稲荷を祀ったのだそうです。

稲荷神社を出て、隅田川に交わる小名木(おなぎ)川にかかる萬年橋を渡ります。小名木川徳川家康の命で掘られた運河で、千葉以北から農産物などがこの川を通って江戸に運ばれてきたそうです。
北斎富嶽百景の「深川萬年橋下」には、小名木川からこの橋の向こうに見える富士山が描かれています。当時はこの辺り、すいぶん賑わっていたようです。

現代の萬年橋を渡って足下を見ると、ここにも蛙がいました。たしかに芭蕉といえば「ふる池や 蛙飛びこむ 水の音」ですね。

さて、今日はここまで。橋の向こう側の散歩は、また明日。
秋の深川散歩(2) 清澄庭園 - じゃぽブログ

(Y)