じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

教材づくり研究中(その後)

中学校の音楽の授業では、平成10年に出された指導要領で和楽器にふれることが初めて組み込まれ、生徒たちが箏や三味線、和太鼓などを体験できるようになりました。そして平成24年度から全面実施となる新学習指導要領では、新たに「わが国の音楽文化の指導を重視する」ということが掲げられています。
それに向けて当財団では、学校の現場で使いやすい日本音楽の音源教材を作成しようと研究中であることを、昨年11月27日の「教材づくり研究中」という記事で紹介しました。→教材づくり研究中 - じゃぽブログ
その後、参考のためにと中学校の音楽の研究授業や和楽器授業の参観、先生方の研究会などに伺ってきました。和楽器をマスターするということに関してはずいぶんいろいろな工夫がされているようです。

先日伺ったこちらの中学校では、1年生と2年生が年間2時間ずつ三味線の授業を受けています。1年生の1時間目はかなりおぼつかない手つきでしたが、クラス全員が楽器を持ってチャレンジしていました。2年生のクラスでは合奏ができるところまでこぎつけ、楽しそうに弾いている男子生徒もいました。
そして本日、邦楽教育の現場をよく知る4人の先生と実演家の2人の先生にお出でいただいて、「第3回教材作成検討委員会」を開きました。この検討委員会は今年度これが最終回ということで、予め先生方に音源教材の内容の提案をお願いし、日本の音楽の魅力に迫るためのさまざまなアイディア、工夫をいただきました。
ジャンルや楽器の違いによる聴き比べ、アジアの音楽や西洋音楽との聴き比べ、歌唱に関する教材の提案など、授業で使いやすいものをいろいろと考えてくださいましたが、それと並行して、名曲を名人芸で聴かせたいという強い要望もありました。子供たちが初めて出会う日本音楽は本当にいいものであってほしい!というのは私たちも同意見です。短くてもよいから名曲名演奏の音源をという提案には、CD「日本音楽まるかじり」を作った当財団の経験が役に立ちそうです。

全3回の検討委員会では、教育委員会や大学に所属して音楽教育を指導・研究する立場の方、中学校の現場で教えている先生方、コーディネーターの方、邦楽の実演家と、それぞれ違った立場から、本当に有益な意見をいただくことができました。日本音楽を子供たちに知ってほしい、親しんでほしいという気持ちは皆さん一緒なのですが、現場でのさまざまな制約があり、課題が多いことも知りました。
教材の作成については、来年度の事業として文化庁に申請する予定です。実現に向けて、さらに案を練り上げていきたいと思っています。

(Y)