じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

松尾芸能賞贈呈式

劇場芸能の出演者、研究者、演出、舞台・用具等の施設関係技能者、音楽関係技能者などに与えられる「松尾芸能賞」の贈呈式がありました(3月29日ANAインターコンチネンタルホテル東京)。
主催するのは財団法人松尾芸能振興財団。第1回が1980年で、今年は第33回になります。松尾芸能振興財団は、興行界や横浜ドリームランドなどのレジャー産業で幅広く活躍した松尾國三が私財を投じて設立した財団です。事業のなかに「音楽関係技能者に対する援助、褒賞」が掲げられていて、松尾芸能賞は邦楽の演奏家が対象になる数少ない賞の一つでもあります。
今年の受賞者は次の方々です。

第33回松尾芸能賞 受賞者

大賞
〈演劇〉三谷幸喜(脚本家)

優秀賞
〈演劇〉白石加代子(俳優)
〈演劇〉安奈 淳(俳優)
〈歌謡〉千 昌夫(歌手)
〈邦楽〉鼓童(太鼓芸能集団)
〈演芸〉国本武春浪曲

新人賞
〈演劇〉中村勘九郎(歌舞伎)
〈邦楽〉清元栄吉(清元三味線)

新人賞から順次紹介と表彰があり、トリは大賞の三谷幸喜さん。女優の鈴木京香さんがお祝いに駆けつけるという華やかな場面もありました。贈賞理由のなかで、安奈淳さん、国本武春さんが、ともに病いを克服して活躍を続けていることに言及されていたのが印象的でした。
その後祝宴となり、千昌夫さんの歌、安奈淳さんの歌、国本武春さんの三味線弾き語りなどが次々と披露されました。邦楽の新人賞の清元栄吉さんは残念ながら演奏はなく、壇上でのインタビューのみでした。清元榮三郎さんに出会ったことが、この道に進む転機になったとおっしゃっていました。清元栄吉さんの贈賞理由を紹介しましょう。

もともと作曲を志して東京芸大の作曲科を卒業しながら、邦楽を学ぶ必要を感じ、清元榮三郎師の音楽性に感動して師事した。適確な技術と鋭い感覚、音楽についての深い認識から、有能な中堅として活躍している。一方作曲家としても邦楽器の合奏曲「触草〜クサニフレレバ」など新鮮な感覚の作品を数多く生み、新しいタイプの作曲家として注目されている。


最後に鼓童の代表、見留知弘さんの太鼓演奏がありました。最初のひとバチで会場からおおーっと声があがり、お腹に響く太鼓の音とパフォーマンスが耳目を集めていました。
松尾芸能振興財団は「松尾塾子ども歌舞伎」も助成しています。こちらは毎年夏に子どもたちが本格的な公演を行っていますが、今年は25周年記念公演ということで、8月に大阪の国立文楽劇場で、9月に東京の国立劇場小劇場で、歌舞伎と長唄が披露されます。「子供たちが伝統芸能・特に歌舞伎を通して親孝行、思いやり、義理人情など日本の心を学ぶ」ことを目的としているのだそうです。なかなかユニークな塾です。

(Y)