じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

栗本尊子先生と柴田睦陸先生と野上彰先生

4月30日の当ブログでも御案内した「柴田睦陸(しばた・むつむ)先生 生誕100年記念CD」の制作過程で、是非とも栗本尊子(くりもと・たかこ)先生にお言葉をいただきたいと考え、お手紙を差し上げました。今さらご紹介するまでもありませんが、栗本先生は、大正9年生まれの現役のメゾ・ソプラノ歌手として、奇蹟の美しい歌声を聴かせ続けておられます。その活動に対し、第23回新日鉄住金音楽賞特別賞が贈られました。(7月に紀尾井ホールで授賞記念コンサート予定)
ですから、栗本先生は公演活動のご予定が多々あって御多忙のさなかと伺い、ご執筆頂くことは断念しなければならないか・・・と思っていた矢先、電話でのインタビューでなら対応しても構わないという、大変にうれしい御返事をいただきました。
おかげさまで、柴田睦陸先生のお人柄を偲ばせる、とても貴重で素敵なお話をお伺いすることができました。その内容は、どうぞ今秋発売予定の柴田先生のCDの発売まで、楽しみにお待ち下さいますように・・・・。

さて、それならば、かねてよりの念願であった栗本先生の歌声を是非とも聴かせていただきたいと思い、「チケットは完売状態です」というところを、なんとか19日の公演だけ入手することができました。

19日、神奈川県民ホールでのプログラムは写真の通り。この日の栗本先生の演目は、「子守唄(深尾須磨子詩/中田喜直曲)」「夏の思いで(江間章子詩/中田喜直曲)」「ばらの花に心をこめて(大木惇夫詩/山田耕筰曲)」の3曲。
 栗本先生の歌唱は、以前、畑中良輔先生が「日本音楽界の奇蹟」と絶賛された通りの歌声で、思わず胸に熱いものがこみ上げました。「伝えたい思いを歌声に乗せて表現し、きちんと伝える」、歌というものはまさにこうあるべきという、そのお手本を聴かせていただいたような思いがしました。
「夏の思いで」の二番冒頭では、ご自身が尾瀬を歩いた遠い日の思い出を語って聴かせるように朗読され、「はるかな尾瀬遠い空」と歌いあげられました。時間と空間を飛び越えて、尾瀬の風景が見えるように思いました。

ところで、栗本先生が今回の柴田先生のCDのためのインタビューを受けて下さることになったのは、実は不思議な御縁でした。柴田睦陸先生や栗本尊子先生は、日本オペラの創生期の実力者で、いわば同志とも言える間柄であったと言っても過言ではありません。ちょうどその頃、藤原歌劇団二期会のオペラの翻訳の多くを担当されていたのは、詩人・野上彰(のがみ・あきら)先生で、野上彰翻訳による「こうもり」では、栗本尊子先生のオルロフスキー、ご主人の栗本正先生のフロッシュが当たり役だったと伺っています。そんな舞台を子供のころからずっと野上先生に連れられて見ていた長男というのが、実は、弊財団の藤本理事長だったのです。


 「栗本尊子先生   写真提供:東京二期会」

種明かしをすれば、柴田睦陸先生のCDのためのインタビューは、野上彰の長男である理事長が、直々に栗本先生に電話インタビューをさせていただくことで実現したのでした。栗本先生はもとより理事長の感激もひとしおで、1時間にわたって、様々な思い出を語るひとときのようでした。
発売までお待ちいただく失礼を重ねてお詫びして、それでも尚、「どうぞお楽しみ!」にとだけ申し上げて今日のブログはおしまいです。

<参考資料>
◆カメラ―タトウキョウから発売されている栗本尊子先生のCD等の御案内
http://www.camerata.co.jp/artist/detail.php?id=354

(やちゃ坊)