こんにちは。東京では、すこし雨模様ですね。梅雨の時期到来でしょうか?今年は、平年より早い梅雨入りのようですね。梅雨に入ると、皮が心配。湿気に弱く、破れてしまうことがあります。
…というわけで、本日は和楽器ご紹介シリーズの5回目。「地歌三味線」をご紹介いたします。何気なく書いた1回目では、「鼓」(◆)をご紹介しました。2回目はネタ切れになって、苦しまぎれ?で執筆した「長唄三味線」(◆)。3回目、4回目は、突撃リポートでお届けした「尺八その1」(◆)、「尺八その2」(◆)が、過去ブログです。
下の写真は、地歌三味線の胴と呼ばれる部分です。胴は「かりん」と呼ばれる木材で出来ているそうで、ミャンマー、タイ、ラオス、ベトナムなどで採れる木だそうです。
下の写真は、棹と呼ばれる部分です。棹は「かりん」ではなく、「紅木(こうき)」や「紫檀(したん)」という木材でできています。「紅木」はインドで採れる緻密で固い木だそうです。製材木屑は紅色で、空気に触れて黒褐色となるそうです。
三味線を演奏していると、棹がへこんでくる「カンベリ」という現象がおきます。ですので、棹の材料としては、硬い木材が適しているのですね。水にも沈むほどの木材ということですが、重いと音の伝わりも良いそうです。
「紅木」には、美しい木目(「トチ」というそうです)が出るものがあり、年月と共に黒くなって、味わいが備わるそうです。
下の写真は、「糸巻」と呼ばれる部分です。ネジは「象牙」や「黒檀」が使用されているそうです。ネジと言っても、ドライバーで巻くネジのように溝があるわけではなく、ただ差し込んであるだけですので、気をつけないと抜けてしまいます。
下の写真は、「天神」と呼ばれる部分です。「海老尾」とも言います。きれいな曲線ですね。
下の写真は、「サワリ」と呼ばれる部分です。上から順に、「一の糸」「二の糸」「三の糸」ですが、良く見ると「一の糸」だけ、金色の金具からはずれています。逆に言うと、二の糸と三の糸は、金色の金具によって浮いています。一の糸だけが、ズボンの折り目のように、うっすらと見える「サワリの山」にかるく触れています。ここが、三味線の特徴である「♪ビィ〜ン」という「サワリ」という共鳴音を出す仕掛けで、一の糸に仕掛けがあります。この仕組みは、17世紀末〜18世紀初めころより、用いられ始めたようです。
下の写真は、「鳩胸」と呼ばれる部分です。以前ご紹介した「柳川三味線」(◆)は、鳩胸が丸みをおびていましたが、現行の地歌三味線は、高い音が演奏しやすいように胴のぎりぎりまで一直線になっています。鳩胸の改良は、舞台などで頻繁に演奏されるようになってからの改良のようです。
下の写真。胴には「駒」がかかっています。書いてある漢数字、「一二」は、昔の重さの単位で一匁二分(いちもんめにふん)のことだそうです。皮の張り具合で、駒の重さを変えるそうです。
下の写真。「胴掛け」と呼ばれる部分は、西陣織。「根音」と呼ばれる部分は、正絹(しょうけん)です。
木を切り出す人、胴や棹を作る人、駒を作る人…、それぞれの専門分野の職人さんの手作りで、最良の響きを求めた技が結集して出来上がっているそうです。
三味線は、演奏者、三絃師、職人さん、そのひとつでも欠けると素晴らしい音色にはならないそうです。でも楽器に使用されている材料は、現在入手困難なものが殆どです。ずいぶん昔のことになりますが、皮を作っている奈良の職人さんのところへお訪ねしたこともあります。私たちを見送ってくださった顔が、今でも忘れられません。
「楽器修理するなら、はやく持っていらっしゃい。ほら、いなくなっちゃうかも知れないからね。」「また〜、そんなー。何をおっしゃいますか。まだまだずっと続けてください。」
「お世話になった楽器屋さんの○○さんが引退したら、私も演奏を引退しよう。ずっと二人三脚でやってきたからね。」
「楽器屋○○さんの後を継がれる方は、いらっしゃるのですか?」「ん〜、いないね。わたしの代で、終わりかなぁ〜」
などという会話も耳にするような、そんなこの頃ですが、この美しい楽器を作り、演奏家の方々を支える職人さんたちが減ってしまったら、寂しいです。
(制作担当:うなぎ)