今年の初コンサートは「箏の会SIFFY（シッフィ） 5 Vol.3 西村朗／箏の領域」でした（2014年1月8日19：00開演、東京文化会館小ホール）。
「SIFFY5」は砂崎知子、石垣清美、深海さとみ、福永千恵子、吉村七重の5人の箏演奏家のグループです。いずれもが現代の箏曲界を代表するビッグネームで、リサイタルに、CDに、放送出演に、また後進の育成にと大活躍の方々です。この5人が集まったらいったいどんなパワフルな演奏が聴けるのでしょうか！？ 2011年の第1回演奏会は大阪、2012年の第2回は福島県いわき市、第3回で初めて東京にお目見えということで、会場はほぼ満席の盛況ぶりでした。
この演奏会についての「ひとこと」をご紹介します（後援した当財団のサイトより）。
―SIFFY5―
同時代に活躍する女流箏演奏家5人によって結成された新しいグループです。
一人一人が非常に長いキャリアを有し、また各自強い信念を持って演奏活動をしてきました。その5人がさらに横のつながりを展開することによって音を極めることを目標としています。なお「SIFFY」は、5人の頭文字を集めたものです。
VOL.3の今回は西村朗氏の還暦記念コンサートとして氏の箏の作品を特集いたします。
プログラムはすべて西村朗さんの作品。1曲目演奏の後に、西村さんが登場してお話がありました。作品についての簡単な紹介もあり、期待が高まりました。
プログラム
1．覡（カムナギ） 〜十七絃箏と打楽器のための〜（1992）
KAMUNAGI for 17-stringed Koto and percussion
十七絃箏：石垣清美 打楽器：森 茂
2．彩歌 〜独奏十三絃箏のための〜（1988）
SAIKA, for 13-stringed Koto solo
十三絃箏：砂崎知子
3．七重 〜独奏二十絃箏のための〜（1988）
NANAE, for 20-stringed Koto solo
二十絃箏：吉村七重
4．時の虹彩 〜箏群のためのヘテロフォニー〜（1984）
IRIS OF TIME, for Seven 13-stringed Kotos & Three 17-stringed Kotos
十三絃箏独奏：深海さとみ 十七絃箏独奏：福永千恵子
十三絃箏：平田紀子･吉澤延隆･鈴木麻衣･深海あいみ･宇佐見明子･吉川卓見
十七絃箏：野澤佐保子･中島裕康
5．五面の箏のためのシャコンヌ 〜十三絃箏三面・二十絃箏・十七絃箏のための〜（2011）
CHACONNE for five Kotos
十三絃箏：砂崎知子・深海さとみ・福永千恵子
二十絃箏：吉村七重
十七絃箏：石垣清美
西村朗さんの箏に寄せる思いと作品について、プログラムの文章から一部ご紹介します。
私にとって箏の第一の魅力は、その凜としてかつ質感豊かな響きです。そしてその響きは繊細にして力強く、時に微光、微風、微香のようであり、また時に火炎、閃光のごとき鋭さと迫力で、オーケストラとも強く対峙します。
楽器としての機能も高度に洗練され、箏柱の自在な移動によっての多彩な旋法の設定や、演奏中の移旋法も可能です。さらに今日では、演奏法の開発も進み、特殊な効果を含めて、記譜法も整備されています。そうした意味では、現代の西洋楽器が持つ多様で安定した機能にひけをとりません。
ゆえに、箏に惹かれ、実験的なものも含む創作を行ってきましたが、拙作はおおむね演奏が至難であり、名手の名技性に委ねるといった性格を指摘されることもしばしばでございます。
たしかにこれまでの常識を覆すような楽器の使い方、奏法が目をひきましたが、まさに名手5人ならではの名技性がみごとに発揮されたというべき演奏でした。
西村さんには邦楽作品が30作あるそうですが、普通の13弦のお箏の独奏曲は1作だけとのこと。その「彩歌」は、西村さんによると「素直でナイーブな書法によって日本的な風景美や詩情を描こうとした」ということで、斬新な作品のなかにあって、かえって印象的でした。
最後の「五面の箏のためのシャコンヌ」は、2011年、SIFFY5の発足を記念して委嘱された作品です。合奏でありながら各演奏家の妙技も聴ける、このグループを象徴するような曲。圧巻でした。
年明け早々、5人の演奏家の果てしないパワーと素晴らしい音楽性に触れ、邦楽とか現代音楽とかいうカテゴリーを超えて、エキサイティングな音楽を存分に楽しむことができました。
さて、今年はどんな公演、パフォーマンスに出会えるのでしょうか。楽しみです。
当財団のサイトには、公演を案内するページがあります。→jtcf.jp – 公演 | 日本伝統文化振興財団の公演情報 ジャンルや月別に検索もできます。ぜひチェックしてみてください。
（Ｙ）
