じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

「梅吉小唄の粋」

「古典芸能ベスト・セレクション 名手・名曲・名演集」シリーズは、貴重な音源の数々を収録していることで、先月の第一回発売以来、じわじわと注目を集めています(CD2枚組で2,500円+税)。第二回発売は3月19日、全部で20タイトルになります。
ラインナップはこちらからご覧ください。 →ツインベスト 古典芸能ベスト・セレクション 名手・名曲・名演集 | じゃぽマガジン

今日はそのなかから私のオススメ!「小唄 梅吉小唄の粋」をご紹介します。 →じゃぽ音っと作品情報:古典芸能ベストセレクション 名手・名曲・名演集「小唄~梅吉小唄の粋」(2枚組)
「梅吉小唄」とは、四世清元梅吉作曲の小唄のことです。1976(昭和51)年と翌年にビクターから発売されたLPレコード「清元梅吉小唄集」と「清元梅吉小唄集 第2集」に収められた全40曲の初CD化です。
演奏は昭和の時代を中心に活躍した小唄の名人、本木寿以(もとき すい)、春日とよ喜(かすが とよき)、小唄幸子(こうた こうこ)、蓼胡満喜(たで こまき)、春日とよ五千代(かすが とよごちよ)をはじめとする方々です。
清元梅吉さんは1932(昭和7)年東京生まれ。清元三味線方として早くから高い評価を得ていました。昨年(2013年)人間国宝に認定されましたが、近年一躍注目を浴びたのは、2010(平成22)年に国立劇場で開かれた、芸の真髄シリーズ「清元〜清き流れひと元に〜」です。長きにわたって二派に分かれていた清元の合同演奏が、この会で実現しました。その中心となったのが、四世清元梅吉さんと七世清元延寿太夫さんです。この経緯は劇的でテレビ番組にもなったので、ご覧になった方も多いのではないでしょうか。(→再放送:清元延寿太夫 清元梅吉 - じゃぽブログ
さすがに三味線の名手が作った小唄だけあって、どの作品も爪弾きの糸(三味線)の旋律に趣向がこらされていて面白く、そちらにも思わず耳を傾けてしまいます。
もともと清元と小唄は深い縁があります。「小唄」の第一号は安政2(1855)年、清元お葉(よう)という女性が16歳のときに作った「散るは浮き」といわれています。お葉さんは二世清元延寿太夫の一人娘で、清元でよく使われる早間の三味線の拍子を応用した手付をしたそうです。小唄は三味線が六分、唄が四分の比重ということですから、まさにその伝統を受け継いだ「梅吉小唄」というべきでしょう。
このCDの解説を書かれた波多一索さんが、以前CD「小唄まるかじり」に寄せた文章のなかで、印象に残っている一節があります。
日本に端唄、小唄、都々逸など民間小歌曲の類いが多いのは、「一年が四季に彩られ、俳句や盆栽など小さいものの中に無限の宇宙を感じる国民性によるのかもしれません」というものです。
小唄の一つ一つが、さまざまな日常の風景や心情、また、お祭りやお芝居などの一場面を切り取っていて、たしかに背景に無限の広がりが感じられます。

「小唄 梅吉小唄の粋」収録曲
DISC1
1 端午 2 弥生 3 こぼれ露 4 峠々 5 美代吉 6 からす 7 安宅 8 まだ五日 9 蔦かづら 10 三年越し 11 おどり屋台 12 雨やどり 13 湯気にかくれて 14 もういちど 15 二人とも 16 楽は苦の種 17 うどんやさん 18 寝おしろい 19 坂―麻布― 20 祭り―浅草―
DISC2
1 傀儡師 2 わかれ路 3 色の世界 4 人に言えない 5 ひょうたん 6 時たま逢うのを 7 鶯の(梅屋敷) 8 浴衣に青く(白百合) 9 せせらぎの(さざんか) 10 雨聞くや(菜の花) 11 昔おもえば 12 殿様がえる 13 牡丹燈籠 14 かまわぬ 15 小指かむくせ 16 お世辞 17 柳かげ 18 恋のあこがれ 19 橋 20 魚河岸

タイトルを見ただけでも、ちょっと粋な世界が想像できるような気がしませんか。作詞者には田中青滋、小野金次郎といった小唄の作家に加えて、流行歌のヒット曲も多い山上路夫慶應義塾大学文学部の名物教授だった池田弥三郎などの名前もあります。
これまで小唄にあまりなじみのなかった方も、きっと「梅吉小唄」の世界をお楽しみいただけることと思います。

[:W350]
なお、梅吉小唄のCDには清元梅吉さんの演奏は入っていませんが、清元の三味線は「四世清元梅吉 至芸の世界」「四世清元梅吉 至芸の世界 2」(いずれもCD2枚組)で聴くことができます。こちらもオススメです。

(Y)