じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

ネット時代の情報

本日「アイヌ文化フェスティバル」へ出かけた帰りに、よく行く店に立ち寄ってそこにいた何人かの方々とお話した際に、皆さんこのイベントについてとても関心があるのに、まったくご存知なかった様子。そこで話題になったのが、最近の傾向として、自身の関心領域の情報は細かく集めていても、それ以外の面白い情報との出会いがめっきり減少してきている、という件でした。

1990年代までは情報誌(雑誌・紙媒体)が大きな役割を担っていて、隔週刊行の「ぴあ」には、映画(劇場、自主上映)、演劇(古典芸能も)、音楽(全ジャンル)、美術(美術館、画廊)、講座、等について細かい情報が掲載されていました。文化全般に関心のある人はこの雑誌を参照することが多かったので、たとえ数行程度の情報でもそれを必要とする相手にある程度確実に情報が届いていたように思います。

そしてインターネットの普及で「情報誌」という紙媒体は表舞台から退場するわけですが、そのとき一緒に無くなってしまったのが、一見無駄なような、ぼやーっと「横目で見る」情報。展覧会名、アーティスト名、作品のタイトルなど、たまたま目の端に飛び込んでくる周縁的な情報。ゆっくりと蓄積され、何かの拍子に新しい世界との出会いの契機ともなっているような、そんな「余分な」情報たちが、気がつくと、身近な所からいなくなってしまった。

ウェブ・スペースを見れば、紙媒体とは比較にならない数の情報が連日各所から発信されています。その恩恵に比較的あずかっている身としては大変に便利で有り難く思う反面、でもそれを探しに行く努力や工夫をしないことには出会えないものが多いのも事実。つまり、結局のところは、「積極的なリサーチ」をしている人だけが情報の受け手になっているという面もあります。だからネットでイベントを告知した側が、紙(チラシなど)より格段に幅広い層にアピールしているつもりでいても、実際のところはわずかな人にしか情報が届いておらず、来場した観客が全員主催者や出演者の知り合いだったなんていうことも別段珍しくもなんともないわけです。

そうはいっても、紙情報が主体となる時代へ後戻りすることはたぶんないわけで、だから情報との付き合い方としては、なるべく狭い部屋(分野)に閉じこもらずに風通しをよくして、さまざまな「横目で見る景色」を自ら配する工夫を心がける外はない、といったところに落ち着きそうです。あとは逆転の発想で、インターネットをあまり見ないようにするとか。(正直これが一番のお薦めですが・笑)

さて、そうは言いつつも始めたこのブログですが、当財団のスタッフはそれぞれが違った趣味・関心・専門知識や情報をもっていますので、その意味では、個人のブログとは違って、日によってガラッと違う「情報の風景」をお見せできると思います。(今はまだ「試験運転」中なので投稿者が偏っており、バラエティに乏しい雰囲気ですが・・・) 今後とも「じゃぽ音っとブログ」をよろしくお願いいたします。

(堀内)