じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

満月の夜に

2月18日(金)、東京新宿の四谷区民ホールで「現代邦楽作曲家連盟作品演奏会」がありました。プログラムに「現代邦楽作曲家連盟とは」という杵屋正邦さん(1914−1996)の文章が載っています。

今日、我が国において演奏されている「日本音楽」のジャンルは、まことに多岐にわたっています。そして、それぞれが、やや閉鎖的に独立した活動を展開している状況が多くみられます。しかし、今後の日本音楽の発展を考えるとき、各々のジャンルでの活動と同時に、広く各分野への理解と交流が必要であると感じられます。このような考えのもとに、平生、創作活動に携わっている有志によって結成されたのが「現代邦楽作曲家連盟」(略称・現邦連)です。

作品演奏会は今年で24回を数えるので、ほぼ四半世紀前に書かれたものでしょうか? その言葉どおり、杵屋正邦さんの残した作品はいまもジャンルを越えて愛され、大切に演奏されています。
試しに当財団のホームページの作品検索に名前を入れてみました。→「杵屋正邦」の検索結果
山本邦山(尺八)、沢井忠夫(箏)、沢井一恵(十七弦)、西潟昭子(三味線)といった現代を代表する名手たちが杵屋正邦作品をとりあげているほか、小唄や新民謡も作曲していることがわかります。

なかでも目立つのが「東京・邦楽コンクール」のDVD。こちらは古典から現代邦楽まで幅広いジャンルを対象とするコンクールですが、毎回、杵屋正邦さんの曲で挑戦する若い人たちがいるということですね。2009年度のコンクールでは、琵琶の曲もふくめて6曲が演奏されています。じゃぽ音っと作品情報:東京・邦楽コンクール2009 洗足学園音楽大学 現代邦楽研究所 主催 第6回東京・邦楽コンクール本選会ライブ /  東京・邦楽コンクール2009 本選会参加者

さて、18 日の第24回現代邦楽作曲家連盟作品演奏会のプログラムを紹介しましょう。いずれも作曲者による演奏で、それぞれの演奏スタイルを生かした意欲的な作品ばかりでした。

杵屋勝四郎禍神(まがかみ)」 ゲーテファウスト』より
 唄 杵屋勝四郎、他 三味線 今藤長龍郎、他 囃子 藤舎呂英、他 太鼓 ヒダノ修一
沢井比河流「凛」
 十七弦 沢井比河流 箏 井関一博
砂崎知子「ブルーラブ」
 一箏 砂崎知子 二箏 堀田けい子
中川善雄「月輪」
 笛 中川善雄、他 打楽器・太鼓 安倍真結
野村祐子「花二題」平家物語平忠度の歌より
 歌と一箏 野村祐子 歌と二箏 野村哲子 尺八 野村峰山
半田淳子「エホバはわが牧者なり」旧約聖書詩篇第23篇より
 琵琶 半田淳子 バイオリン 河村典子

風の強い一日でしたが、そのおかげで澄み渡った夜空には皎々と光る満月が。5人の笛奏者による「月輪」の幻想的な響きを思い浮かべながら家路につきました。

(Y)