じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

【5/31(6)】善養寺惠介《古典尺八》 #charity531

歴代の日本伝統文化振興財団賞の全受賞者による5/31東日本大震災チャリティ公演「古典芸能の夕べ」の出演者を紹介するシリーズ。今日は第6回受賞者の善養寺惠介(ぜんようじ・けいすけ)さんをご紹介いたします。

善養寺さんは1964年東京生まれ。「6歳より、根笹派錦風流の神如道のもとで尺八を学んでいた父より虚無僧尺八の手ほどきを受け、後に岡崎自修、神如正師に師事し芸域を深め、すでに中学生の頃にはその芸に完成の趣があったと言われておりました。後に東京芸術大学に進み、音楽学部、大学院を通して山口五郎師に師事し芸域を拡げますが、それまでは古典尺八本曲のみを修得するという徹底ぶりでした。(後略)」という贈呈理由と芸歴はこちらにあります。→http://japan.japo-net.or.jp/cultivate/recipient/recipient_6.shtml

善養寺さんが幼少の頃に学んだ師はいずれも神如道さんの門人でしたが(神如正さんは子息)、神如道(じん・にょどう 、1891 - 1966)とは津軽の生んだ尺八家で、「絶滅の危機に瀕していた数々の虚無僧尺八曲を、積極的に収集し伝承した古典尺八界の草分け的存在」でした。1964年(昭和39年)から翌年にかけてビクターで7枚のLP『神如道尺八古典本曲集』を制作し(PRD-2007〜2013、カスタム盤〔プライヴェート盤〕としての制作で発売元は神如道尺八古典本曲保存会。未CD化)、また1980年(昭和55年)には新たにテイチクから古典本曲集の6枚組LPを発売し、こちらは後に新発見の録音10曲を追加して6枚組CD『古典本曲の集大成者・神如道の尺八』として復刻されています。

善養寺さんは、東京藝術大学では大学院時代を含め山口五郎さんに師事して、芸域を一段と深めました。その後はNHKラジオや舞台での活躍を経て、1999年以降は毎年リサイタルを開催。また欧州およびアジア各地での演奏も積極的に行なって日本伝統文化の海外への紹介に務めていらっしゃいます。古典本曲だけでなく三曲演奏を含め、幅広い活躍が評価され、2008年にはトッパンホールでのリサイタルで文化庁芸術祭新人賞を受賞、2009年には同じくトッパンホールでのリサイタルで文化庁芸術祭優秀賞を受賞されています。

こちらが善養寺惠介さんのホームページです。→ 「善養寺惠介 official website」 毎月更新される「随筆」欄(百錢会通信からの転載)を楽しみにされている方も多いのではないでしょうか。じつはわたしもそのひとりです。

善養寺惠介さんの財団賞受賞記念のCDはこちらです→じゃぽ音っと作品情報:第6回ビクター伝統文化振興財団賞「奨励賞」善養寺惠介 /  善養寺惠介


当財団発売の、他の参加CDとしては、『亀山香能/時を紡いで』の「嵯峨の秋」で、通常は本手・替手・尺八で演奏するパートを箏と尺八にアレンジしたかたちで演奏。福原徹さんが2006年に開催したリサイタルのライヴ盤『徹の笛』では「男声独唱・笛・尺八のための三章 草の祈り」に参加。他に、当財団の邦楽演奏家の後継者育成事業「邦楽技能者オーディション」の合格者によるCD『佐々木千香能《山田流箏曲》』『市橋京子《地唄》』『高橋佳子《生田流箏曲》』にも参加して、素晴らしい助演を聴かせて下さっています。
 
  


善養寺惠介さんは、他にノーザンライツレコードから、『鶴の巣籠』−虚無僧尺八−(1998)、『霧海篪』−虚無僧尺八−(2001)、『虚空』(2004)の3枚のソロ・アルバムを発表。どれも美しく印象的なジャケットで、古典尺八の広大で奥深い世界が見事なヴィジュアルで表現されているように思います。詳しくはこちらをご覧ください。→
  


また、当ブログで前回ご紹介した第5回財団賞受賞者の山田流箏曲・山登松和さんと展開中の本格的な古典音楽デユオ“ZEN YAMATO”のアルバム『zen yamato』(2008)もリリース(収録曲の「布袋」の尺八カラオケCDも発売中)。ブログでも情報を発信されています。→ ZEN YAMATO


来る5月31日のチャリティ公演では、その山登松和さん(山田流箏曲)の三味線、第13回財団賞受賞者の遠藤千晶さん(生田流箏曲)の箏との三重奏で、「さらし幻想曲」を演奏されます。「さらし幻想曲」は1943年(昭和18年)に山田流箏曲の中能島欣一が作曲した名作で、三弦(全三章の内、第二章だけ地歌三味線で、あとは平撥、平駒)と箏とフルート(尺八代用、省略も可能)の合奏曲。古典曲「さらし(晒)」から特徴的な旋律を取り出し、その自由な組み合わせで創作されています。今回の三者による演奏はこの名曲のさらなる味わいを確かめるまたとないチャンス。ぜひお聴き逃しのないように。


東日本大震災チャリティ公演「古典芸能の夕べ」

開催意図、全演奏予定曲目はこちら→ 東日本大震災チャリティ公演〜日本伝統文化振興財団賞歴代受賞者による〜古典芸能の夕べ
【日時】平成23年5月31日(火) 午後6時開演(4時半開場)
【場所】紀尾井ホール(1階) 
【入場料】5,000円(全席自由)
この公演チケットで、第15回日本伝統文化振興財団賞贈呈式(午後5時開始)にもご入場いただけます。
【チケットお申し込み】日本伝統文化振興財団 電話:03-3222-4155(平日11:00〜18:00)
インターネット:じゃぽマガジン | 伝統芸能 観たい! 聴きたい!
紀尾井ホールチケットセンター 電話:03-3237-0061(平日・土曜10:00〜18:00)

(堀内)