じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

五百羅漢展で

両国の江戸東京博物館で特別展「五百羅漢」を見てきました。

芝の増上寺に秘蔵されていた仏画、全100幅(一幅172㎝×85㎝)を一堂に展示する空前絶後のスケール、忘れられていた幕末の天才絵師、狩野一信の命がけの仕事(96幅まで描いて没し、あとは妻と弟子が仕上げた)の再発見!など、事前にそのすごさは聞いていましたが、ようやく実物に会うことができました。
大胆な構図の面白さ、細部の緻密な書き込み、色彩や金の美しさなど、見れば見るほど興味はつきません。
地獄や災難から人々を救うビームを出したり、珍獣を手なずけたり、また顔の皮をべりべりとはいで「実は・・・」とその下から不動明王や観音様が現れたりと、五百人(?)の羅漢さまの活躍は、奇想天外なアイディアに満ちています。とにかくこれだけのものを一挙に見られる機会はめったにないので、一見の価値ありです。
展覧会の見どころや狩野一信については、こちらの公式サイトからご覧ください。→http://500rakan.exhn.jp/viewpoint/index.html
この種の展覧会の例にもれず、たくさんのグッズや関連商品を売っていましたが、その売り場もひと味違っていて楽しめました。商品が手書きの壁新聞で紹介されているのです。なんだか小学校時代を思い出してしまいました。もちろんちゃんとマジメに調べてあって、こんな具合です(写真をクリックすると大きくなります)。
まずは定番のクリアファイル。

お香も売っていました。

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そして私はこの蜜柑最中をお土産に買ってしまいました。ただのシャレ、とわざわざ書いてありますが、とても美味しそうだったので。

ところで、増上寺に秘蔵されてきたこの100幅の仏画に注目し、3年の年月をかけて全作品の展覧会を企画し実現させた美術史家の山下裕二さんは、「日本美術応援団」を立ち上げ、現在の日本美術ブームを牽引してきた方です。
が、実は学生時代はお箏の練習にあけくれ、一時はプロをめざしたほどでした。そのいきさつを「宮城会会報」に連載していましたが、最終回(会報第209号)でつぎのように記しています。

振り返ってみれば、私が日本美術史を教える教員となった二十年前、つまりバブル崩壊直前のころ、現在の「日本美術ブーム」みたいな状況を予見した人は、一人もいなかったのではないか。東京国立博物館でどんなに素晴らしい絵が展示されていても、閑古鳥が鳴いていた。「松林図屏風」を見る部屋に、自分の靴音だけが響くようなありさまだった。箏曲家志望が転じて美術史家となった(というか、なってしまった)私は、一応「食べていける」目処がついた後に、そんな状況をなんとか変えて、多くの人が日本の美術に目を向けるよう、広報的な役割を果たすことを自らに課した。そして、そんな目論見は、この二十年間のさまざまな仕事を通じて、ある程度果たせたのではないかと思っている。(略)
いま、私は自分のことを、もう美術史の「研究者」だとは思っていない。お先真っ暗だったころ、なんとか箏曲への想いを封印して、ようやく美術史の教師を職業として選択することができたのだから、なんとか美術史への恩返しがしたい。ちょっとおおげさに言うなら、そんな気分になっている。

日本音楽にも、こんな素敵な応援団長が現れてくれたらいいなと切に思います。

(Y)