じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

常磐津「愛の会」

常磐津といえば「関の扉」や「紅葉狩」など、歌舞伎や舞踊の音楽として聴くことが多いのですが、今日は常磐津英寿(ときわづ えいじゅ)さん主催の演奏会「第6回 愛の会」に行ってきました(2012年2月 5日(日)午後1時半紀尾井小ホール)。

今回は、昨年2月に亡くなられた英寿夫人、鈴城好恵(すずしろ よしえ)さんの追悼・作品演奏会として開かれ、鈴城さんの作詞した曲ばかりを集めたプログラムでした。
常磐津英寿さんは常磐津三味線の人間国宝で、前名が四代目常磐津文字兵衛です。そのお名前を継いだご子息の五代目文字兵衛さんらとともに演奏されました。
曲目は次の通りです。

1.五節供(ごせっく) (平成3年発表)
  鈴城好恵作詞 常磐津英寿作曲

2.もやい船 (昭和39年発表)
  鈴城好恵作詞 常磐津英寿作曲

3.傳残竹一管(つたえのこすたけのいちかん) (昭和42年発表)
 「挿木々」 鈴城好恵作詞 常磐津英寿作曲
 「深山の余花」 鈴城好恵作詞 常磐津菊丸作曲
 「葵祭り」 鈴城好恵作詞 常磐津八百八作曲
 「常磐木落葉」 鈴城好恵作詞 常磐津菊志郎作曲

3曲目の「傳残竹一管」は4景からなる大作で、「四つ葉の会」同人の方が4人協同で作曲した作品です。常磐津らしい構成ですが、福原道子さんの笛が入って、おとぎ話のような物語に引き込まれました。プログラムには、大部の「歌詞集」が添えられていました。

常磐津については、「常磐津協会」のホームページに「歴史と特長」としてつぎのように記されています。

歌舞伎の伴奏としての重厚さと、舞踊の伴奏としての軽妙さを、あわせ持っています。
古風に、時には艶っぽく語り(歌い)ます。
また、時代時代の市井風俗に取材した新鮮さもあります。

歴史についても詳しい説明がありますので、興味のある方はぜひ読んでみてください。
このホームページのなかで、常磐津協会の顧問を務める常磐津英寿さんは次のように書いています。

延享四年(1747)に当流儀が興ってから今日まで、次々と名曲が生まれて歌舞伎と共に発達してまいりました。私が座右の銘としております言葉「古き礎の上に新しきぞ建つ」、これは常磐津の成立から現在に至るまでを一言で云おうとしているのです。祖先より受け継いで来ましたこの芸術を大切に保存しつつ多くの方々に体験していただきたいと思っております……

常磐津の発展のために、古典の保存・伝承に努めるとともに新しい曲を次々と発表してこられましたが、奥さまはそのよきパートナーでいらしたことが、今日の演奏会であらためて感じられました。

(Y)